交通事後による「遷延性意識障害」としてとらえるのか、
それとも心疾患の結果としてとらえるのか、
双方を総合的にとらえるのか、という疑義がまずあるのですが、
原則として、遷延性意識障害(いわゆる「植物状態」)とは、
日本脳神経外科学会により、
「自力移動が不可能」「自力摂食が不可能」「糞・尿失禁がある」
「声を出しても意味のある発語が全く不可能」
「簡単な命令には辛うじて応じられるが、ほとんど意思疎通は不可能」
「眼球は動いていても、認識することはできない」
の6項目いずれもが治療にもかかわらず3か月以上続いた状態を言い、
かつ、当状態が6か月以上続いたことをもって「症状固定」とします。
「症状固定」とは、傷病等がこれ以上良くも悪くもならない状態で、
かつ、その状態がその後おおむね1年以上継続することが予想できる、
ということを言います。
(= 少しでも回復する可能性があれば、症状固定ではない)
障害年金の請求においては、
障害認定日(初診日から1年6か月後)において症状固定の状態で、
かつ、年金法でいう障害等級に該当することが必要です。
(= 初診日から1年6か月が経たないと、そもそも請求不可能)
以上のことから、
遷延性意識障害としてとらえるのであれば、
初診日(手術日、と解する)から6か月経過後の症状固定を前提に、
障害認定日(初診日から1年6か月経過後)に至らなければ、
障害年金の請求はできません。
つまり、実際には、少なくとも1年6か月を要してしまうのです。
なお、障害認定日に関しては、
いくつかの傷病においては、前倒しの特例があります。
たとえば、人工透析に至った場合や、
心臓ペースメーカーを埋め込む手術を行なった場合には、
その日が障害認定日となり、障害年金の請求ができます。
ところが、遷延性意識障害に関しては、一切あてはまりません。
いろいろと不可解な思いもおありかとは思いますが、ご理解下さい。
注:
上述から、「6か月」という社会保険事務所の説明では不十分で、
正しくは、障害認定日である「1年6か月」に至らないと
障害年金の裁定請求はできないものと思われます。
お礼
ありがとうございました。大変参考になりました。