登山歴30年です。
冬山で使う、それも屋外で使う可能性があるのなら(休憩時にお茶を沸かしたり)、アルコールバーナーはとても使い物にはなりません。
ガスバーナーも最初は火力が強くてもボンベが気化熱を奪われて冷えてしまい、時間の経過と共に火力が弱くなってしまいますが、ボンベを断熱シートで覆うなどの手段で対処は可能です。
アルコールバーナーは、何も対処せずにヘロヘロな火力になってしまったときのガスバーナーよりさらに火力が弱いので、冬の野外だと永遠にお湯が沸かないのではないか?と思う程度の代物です。
まあ少なくとも私は、冬季の火器としてアルコールバーナーの使用は、考慮したことすらありません。
大学山岳部時代は、部の山行ではガソリンバーナー(今は亡きホエーブス)がメインでサブにEPIのガスバーナーを使ってました。
当時のEPIは元々火力が強くない上に寒冷地ではすこぶる意気地がなかったので、メインにはとても使えない代物だったのですが、ちょうどその頃ボンベに使うガスの混合率の規制が緩和されてプロパン混入率が高い強力なボンベが販売されるようになり、それに伴ってバーナーの火力も飛躍的に向上しました。
ちょうどその頃、個人的にプリムスのP-2243という機種を買って、そのあまりの火力の強さに感動して以来、個人山行では厳冬期でもガスオンリーになりました。そのP-2243、今でも現役バリバリで使っています。そもそもまだ販売されているロングセラーモデルでもあるのですが。
部の山行では長期に渡る山行が多いので、燃料計算のノウハウが蓄積しているガソリンがやはりメインでしたが。厳冬期の北ア南部縦走だと1人1日どれだけ、登攀だとこれだけ、という表がありましたから。
当時使っていたガソリンバーナーはホエーブスで、これは構造が極めてシンプルなため細い針1本あれば現地でたいていの故障に対応できました。つまり故障はノズルの目詰まりしかない機種だったので。
これがジェネレーター式のコールマンだと、燃料系の取り回しが複雑になるのでジェネレーター部で詰まると現地では修理することが難しく、冬山、それも長期山行でバーナーが故障することは即生死に関わる大問題だったので、大学山岳部ではコールマンは人気なかったです。
冬山でバーナーが故障すると水が作れなくなってしまい、水なしで行動を続けると脱水になってしまいます。
現在ではヒマラヤでも高所ではガスオンリーの登山隊も多いですし、個人のハイキングでもガスバーナーが最も使いやすいと思います。
実はガスのプロパン混入率次第ではあるのですが、寒冷地になればなるほど本来はガスの方が火力的に有利です。
現在はEPIもプリムスも、標準ボンベ、寒冷地対応ボンベの他に寒冷地専用ボンベもラインアップされているので、火力、使いやすさ、安全性のあらゆる面でガスバーナーがベストだと思います。
ガソリンの利点は多人数長期の山行で燃料代が安く嵩張らない、という点のみになっているかと。
私はガスバーナーはプリムスのP-2243とP-171、P-153の3つを持っていますが、一番使いやすいのは最も軽量コンパクトになるP-153です。
P-171は4,200kcal/hという大火力モデルなのですが、どのみち最大火力を発揮するのはボンベが満タン時のみですし、大火力モデルは燃費も悪くなるので、3,200~3,500kcal/hあたりのモデルが最も使いやすいと思います。EPIだとREVO-3700あたりがちょうどP-153に相当するモデルで使い勝手が良さそうです。
分離式も良いとは思うのですが、やはり燃料系の取り回しはシンプルな方がトラブルは少ないでしょう。
設置安定性については、雪山の方が夏山よりよほど簡単に対処できます。夏山だとそもそも石ころがあったりして完全に平坦な面を作るのは困難なのですが、雪山だと容易に作れますから。
ならして固めた雪面にベニヤ板でも置けば完璧に安定した接地面を作ることができます。私は昔就寝用のマットに使っていたウレタンの板(厚みが2cmほど)を20cm四方くらいに切って使っています。そのうちベニヤを同サイズに切って貼り合わせて「バーナー設置板」を作ろうと思っているところです。ウレタン板の良いところは断熱性が高いので、ボンベの冷えを少しでも軽減することができる点です。
ただ、ボンベは雪面からより自らの気化熱で冷えているので、ボンベ自体を少し暖めてやる工夫はどちらにしても必須です。
ただし、暖めすぎるとボンベの内圧が高くなりすぎて危険なので、特に寒冷地専用ボンベは、あまり気にして暖めない方が良いと思います。火力が落ちてきたら少し対処してやるくらいが良いのでは。
ヒマラヤの高地キャンプで、テント内に吊したランタン(当然ボンベが装着されている)の真下でバーナーを使っていたら、ランタンのボンベが爆発してテントが吹っ飛んだ、という話が割と最近の山岳雑誌に載っていました。
大型の鉄板の下にバーナー2台を置いて使っていたら爆発した、という事故はけっこう聞きます。
なので風防も全方位ぐるりと囲んでしまうと危険でしょうね。風上を反面カバーするくらいで十分でしょう。