#1です。ご興味があるようですね、それではお話しいたします。
ただし私は米国勤務が長かったので、米国証券界の話になりますが、よろしいでしょうか? ウォール街の証券屋が世界金融を牛耳っているのが現実ですから、参考にはなると思いますよ。
証券屋には「アナリスト」と称する社員がいますよね。「あくまで中立の立場」で業界動向や特定の会社を調査し、投資家に情報還元したりアドバイスするという役職です。
金融業界でサラリーマンをしていた時、大手米系証券会社主催セミナーの後の立食懇談会で、同社員の一人が「アナリストというのはつまり営業ですから、真に受けてはいけませんよ」と漏らしました。私は「やっぱりそうか」と思いました。そう、表向きは「中立」でも、所詮「給料をもらっている一雇われ社員」なんですよね。だから、中立も何もあり得ません。
例えば消費者物価指数や失業率など重要な経済指標が当局から公表される前にアナリストが「予想」を発表します。おかしなことに今日の株式市場は、純粋な経済動向によってではなく、「発表された経済指標実数がアナリスト予想に対して上か下か?」という絶対評価で相場が動く構造になっていることをご存知でしょうか? FRB(連邦準備銀行:米国版日銀)が景気動向によって誘導金利を調整する際にも、「0.25%上がる、下がる」という前予想をアナリストが出します。これに対して公聴会でFRB議長が実際に発表する利率がどうだったかで市場が動くという構造です。企業業績に関する「アナリスト予想」も全く同じです。どうしても私にはこれが人為的操作に映り、「市場原理に基づく株価の上下」には思えません。アナリストというのは、それくらい力が強いのです。
全てが全て悪意がある訳ではない?のだと願いますが、一方で所詮「アナリスト=営業社員」なのですから、社内上層部の意向(プレッシャー?)を汲み、自社の投資資金ポジションを鑑みて、多少予想値を少な目・多目に発表することで、理論的にはいくらでも自社が有利になる「操作」ができますよね。もともと「予想」ですから、外れたとしても全くお咎(とが)めがないばかりか、こうした「操作」が上手く行けば自分自身のボーナス査定に跳ね返ってくる訳ですから喜んでやるでしょう。つまり、出来高払い制の営業部員と同じです。自分自身の調査と勘で勝負する競馬の予想屋さんの方がよっぽどクリーンですよね。
証券屋の人間は、雇用拡大などの良いニュースはもっと良く、反対に雇用減少などの悪いニュースも「市場は既に折り込み済み」と言います。こう証券屋が言えてしまう理屈が私には全く分かりません。「折り込み済み」と言われれば市場の投資家が安心するようですが、経済状態自体が改善した訳ではないのですから。
また米政府自体も、今日の自国経済が「株式本位」であることをよく理解しているため、明らかな「一般投資家保護」という名目がない限り、証券屋が何をしようと全く手を出しません。というか「不意に手を出せない」と言った方が良いのでしょう。世界一を誇る経済大国の政府が自国の株式市場で「株式不安」でも引き起こしてしまったら洒落にもなりませんから。
、、、まだ他にも話はありますが、以上が長い間金融機関にいて感じた私の「アナリスト観」です。決して株式市場自体を否定するものではありません。しかし「全世界が証券屋に踊らされている」と考えている私には、「証券屋=合法詐欺集団」としか思えず、私個人のおカネ一円でも同業界に儲けてもらおうとは毛頭思いません。私は足を洗ったので、日本の株式市場にどれくらい証券屋の影響力があるのかは分かりませんが、「それでも儲かるから良い」と割り切ることができる人はともかく、私自身は証券屋と一切関わりを持ちたくないです。何故こんなことが言えるかというと、自分で裏側を見たからです。
お礼
ご経験に基づく丁寧なご回答をいただき、大変ありがとうございました。私自身は表から証券業界を見ているに過ぎず、今回いただいた「アナリスト観」はとても参考になりました。ご指摘を拝読しながら、証券会社に所属するアナリストという位置づけが、中立性に欠けるものだという認識が深まりました。今後証券会社の動向をみる中で、参考にさせていただきます。重ね重ねご丁寧な回答をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。とてもとても示唆が多かったです。