完全年俸制を採用するのか、賞与を除く年俸制にするのか、福利厚生(住宅手当や家族手当など)を含めてしまうのか別途にするのか、対象者は管理職層か一般社員までか、などの条件付けで様子がかなり変わります。年俸の上下の幅がどの程度か、上下幅のフル=レンジで変動するのかパートリーなものか、などの色づけでもインパクトが全然違います。一言で「年俸制」と言っても、その態様は各社各様です。
ただ、一般的に言われていることだけでいうと、
【年俸制のメリット】
●会社にとって
・能力・成果に応じた処遇が可能(そのために年俸制にするので、当たり前ですが・・・)
・社員の達成目標を明らかにするので、達成意欲を刺激する
・優秀な人材を育成・確保しやすい(採用アピール効果や成長インセンティブ)
・労務費を予算化しやすい
・給与支給事務を簡略化できる(年俸制の場合、超過勤務手当を織り込む例が多いので・・・)
●従業員にとって
・年間の収入が予めわかるので、その年の生活設計はしやすい(次年度は無理ですが・・・)
・結果次第では給与の大幅増が期待できる
【年俸制のデメリット】
●会社にとって
・短期的視野で結果重視に陥りがち(プロセスを大事にしなくなるということです)
・評価の公平性・客観性・明確性を維持するのが困難で、信頼性・納得性を維持するのが難しい
・成果が数量化できない場合は、格差を合理的に説明できない
・査定格差が大きいと、足の引っ張り合いになりがち
・目標が達成可能な近視眼的なものに傾き、冒険・チャレンジをしなくなる
・次期の目標と連動させるのが難しく、モチベーションにつながりにくい
●従業員にとって
・中長期の生活設計がしにくい
・ライフスタイルの変化は自己責任(諸手当も織り込んだ場合)
・査定に対する強迫観念から過労に陥りやすい
・結果次第では生活そのものを大きく変えなければならない衝撃もありうる(結果は運不運と言うこともあります)
退職金については、成績に応じたポイント制にしておいた方が良いといわれます。なぜなら、給与が短期的に決まり、退職時の給与で退職金が決まると、定年退職の年代では年俸がダウンしていると思われますので、長期的な功労に報いるという視点を欠くことになります。短期刈り取り型の人材戦略では、モラルダウンを招き、会社へのシンパシーを感じなくなるといわれているため、ポイント積み立て型が良いとされるのです。
働き方も見直す必要があります。あくまで結果を求めるというのが年俸制のメッセージですから、時間の使い方を労働者に委ねるような大胆な労務管理手法の転換が必要でしょう。
また、年俸制を適用する従業員は会社の数字を知ることができるような経営情報のディスクローズが必要です。
お礼
遅くなり申し訳ございませんでした。 詳しいご回答ありがとうございます。一言に年俸制といってもいろいろあるのですね。大変参考になりました。ありがとうございました。