元駅員・現車両研修職員です。
結論としては、「ブラウン管テレビで見ていたら人間が眠くなるのは当たり前」ということ。転寝をしているときにテレビを家族に消されて目がさめた経験は誰にもあるはず。また「実物の電車内でも下回りから聞こえる音は母胎内で聞く周波数に近いので人間であれば眠くなる」ということです。
つまり、眠気防止には各自の方法で努めてはいますが、「本物の運転士も人間である以上は眠くなる」、指差喚呼の目的は「現示されている信号を確認する」ことであり、「眠気防止は副次効果である」ということです。マスコン(車で言うアクセル)ハンドルのデッドマン(緊急停止装置・ハンドルを下に押し下げる方式と引き金式に握る方式の2種あり)スイッチも、名義上は「運転不能の事態に陥った場合に緊急停止させるもの」ですが、実際にはスイッチを押し込むことで眠気を防止する効果を得るためのものではないかと思います。
もう退職したので実名を出すと、在職中に東京メトロでは多いときには週に2~3回という頻度で居眠りによる停車位置過走事故があったり、信号冒進事故がありました。運転士が時々立って運転しているのは眠気の防止のためであることが大半です。メトロ東西線の九段下と東陽町で同じ日に信号故障があったときも、両者とも信号冒進であった可能性があるとして内部調査がありました。
この他、居眠りによる過去の重大事故としては、旧国鉄名古屋駅構内で寝台特急に連結作業中の機関車が衝突(飲酒運転)したり、同じく西明石駅構内で寝台特急が居眠り運転のため速度超過で脱線転覆し寝台車がホームにめり込むなどの事故がありました。いずれも死者は出ていませんがあわや大惨事という事故です。
指差喚呼については、「出発進行」は「目の前の出発信号が進行現示であることを確認した」喚呼であり、「発車」のあとに起動するのが大半のようです。閉塞信号は一列車の長さを一閉塞として、二閉塞分空かないと01信号(色灯で言うR現示・赤信号)が現示されるのですが、偶然ながら居眠りをしにくい間隔で区切られているので居眠り防止の効果が無いわけではありません。
本来は自分自身の命も預けているわけですから眠くなるはずは無いのですが、最近は特に若い人が入社後短期間(約1~2年)で運転従事職になることがあり、エリート意識が高く気が緩みやすいのも一因ではないかと思います。余談ですが、蒸気機関車が特急を牽いていた時代、機関士が手すりを触って手袋が汚れたら整備士が拳骨を喰らったという逸話もあります。そのくらいのプライドを持ってくれればと思うのですが、時代が違うようです。
なお、誤解があるといけないので追記しますが、福知山線脱線事故は居眠りではなく列車遅延により運転士が過剰な処罰を恐れたための速度過剰が原因であり、居眠り等の不注意ではありません。
お礼
ありがとうございます。 そういえば立って運転している人を見かけますね。 座っていていきなり立つ人・・・ 前が見えないのかな?と思ってました。