前の方々がおっしゃられている通り、林地の腐植(腐葉土)を由来とした有機酸類(フラボ酸等)と、金属元素との錯体が、河川を通じて沿岸海域から大陸棚に及ぶ生態系維持に寄与していると言う研究が現在大変な脚光をあびています。
森林の腐葉土の層を「腐植層」とも呼び、この植物の葉などの遺骸からなる腐植は、森林の下草や樹木、土壌の微生物を培養する役目もはたしています。腐植から生成されるフラボ酸類、所謂有機酸類の一群は、土中の金属元素などと水溶性錯体を作り、微量要素として微生物や、成長過程の植物に吸収しやすい形をつくり、土壌中に蓄積保全されます(鉄などの微量要素は肥料や植物活力剤にも含まれていますね)。これが河川水や地下水に流失し、河川、地下水脈などを通じ海に運ばれます。
今最も注目され、指標とされている成分として、鉄イオン(Fe2+)があります。この2価の鉄イオンは、海草、植物性プランクトンなどの細胞膜を最も良く透過し、海岸付近の藻類を繁茂させ、生態系の基底を安定化させる役目を果たします。
この生態系の基底が失われると、「磯やけ」と言う石灰藻が海底の岩盤に異常繁殖した状態に陥り、コンブ、ホンダワラ、アオサ等の海藻類が繁殖できず、結果草食性の小動物、動物性プランクトン、そこを隠れ家とする生物が生存できなくなります。
しかし、腐植由来ではない無機鉄イオンは、海に到達する前に、あるいは海水と淡水が混ざり合う際に酸化還元されたり、コロイドとして沈殿したりするので、海洋の動植物にまで効率的に到達しません。よって、有機酸鉄の形がもっとも相応しいといわれています。
海(水圏)で育った魚介類は、人間などの動物食料になり、結果陸地に運ばれ、陸圏に運ばれ、再度陸圏の植物などに利用されているという「生態系の大きな循環」は本来の自然環境にあるべき姿なのです。
今研究されているのが、鋼鉄や、溶鉱炉スラッグで出来た漁礁で直接海水中に落とし、鉄イオンをを補給するプロジェクトが各地で行われており、相当な成果を上げていますが、対処療法的で、一時しのぎにすぎません。
よって、広域的に「魚付き保安林」の保護や、「里山」などの再生、陸圏から栄養分を補給する自然の運搬経路、環境の回復努力が試みらています。前の方々と併せて参考になれば。