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一般に半大統領制とされる国家では、大統領と議会との権力関係が異なっています。フランスを例に挙げて考えてみます。
「半大統領制」と称されることのあるフランスの大統領制ですが、早い話が「大統領制」と「議院内閣制」を組み合わせた政治体制であるのが特徴です。世界の民主主義国家の大半が「大統領制」か「議院内閣制」を採用しているので、その両者のメリットを吸収しているように思えます。しかし時として、この政治体制には大きな歪みが現れます。それが「コアビタシオン(Cohabitation)」です。フランス語で「同居」を意味するこの現象は、フランスに於ける大統領と首相の所属勢力が異なる場合、本来は国家元首であるはずの大統領の権限が大きく制限されることを指します。
フランス第五共和政下の政治体制に於いて、大統領は、首相任免権による行政権(執行権)の掌握や、議会解散権等の巨大な権限を有しています。一方の首相は、大統領に対して責任を負うだけでなく、議会(下院/国民会議)に対しても責任を負っています。この為、大統領の所属政党(与党)と議会の多数派勢力(比較第一党とは限らない)が異なる場合(つまり多数派勢力が大統領から見て野党である場合)、大統領の所属政党から首相を選任すると、恐らく議会は不信任決議を行使し、内閣が総辞職する不安定な状況に陥るでしょう。従って、大統領が自らが所属していない議会多数派勢力から首相を選任することにより、政局を安定させることが可能となる訳です。しかし、大統領の権限には首相の同意が必要な物も少なくありません(例えば法案拒否権)。この為に大統領は、コアビタシオンの状態では権限が縮小されてしまいます。具体的には保守政党の大統領と革新政党の首相、あるいは革新政党の大統領と保守政党の首相のような組み合わせといった場合を指し、特にこのような状態は「保革共存政権」といわれます。
これに対して純粋に大統領制である国家では、大統領は議会解散権や法案提出権が存在しない場合が多数です。また議会も不信任決議により大統領を罷免することができない場合が多いです。要するに大統領が議会が決定した事項を黙々とこなすシステムです。しかし大統領制に於いても、一種のコアビタシオンの可能性は大いにあります。大統領支持勢力と議会多数派勢力が異なることも大いにあるでしょう。そういう意味では大統領制と半大統領制は非常に似ています。単に議会から承認される首相がいるかいないかで大統領制と半大統領制を区別することも可能でしょう。またコアビタシオンの場合に限って考えると、「行政権と立法権の対立(大統領対議会)」か「行政権内部の対立(大統領対首相)」かという問題が、大統領制と半大統領制の相違点といえます。
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