エリザベス1世の時のマンスター植民(1580年代)は、ジェームズ1世のアルスター植民と非常に良く似ていて、住民の移住も伴っているので、No.4の回答のような考え方に従っても、チューダー朝にも住民の移住を伴う大規模な植民があったと言っても、別に間違いだとは思いませんが、マンスターでは、その後反乱が起こると住民は一旦逃げ出したりししていていて、規模・永続性の点では、スチュワート朝以降とは違いますから、No.4の方の回答通りに理解されても、私は一向に構いません。
ノルマン人の征服後わりと短期間の内に、イングランドにはアングロサクソン系貴族はいなくなったので、「アングロサクソン系領主(貴族)」という言い方には若干抵抗は感じます(普通は、Anglo-Normanなどと言います)が、民族対立ではない、というのも、No.4の方の仰るとおりだと思います。っていうか、そもそも、アイルランド人も、国教徒に宗旨替えして、宗教上の最高権威としてのイングランド王の地位を受け入れれば、プロテスタントになってしまうので、○○系といった民族の問題を持ち込む事自体意味がありません。宗教改革の極初期のプロテスタントって、基本的には、皆宗旨替え組ですしね。
民族よりも、宗教上(かつそれが政治にも密接に結びつく)、ローマ法王の権威を認めるカトリック、イングランド国王の権威を認める国教徒、そのどちらも否定する国教徒以外のプロテスタント、の3つの区分の方が、この時代は重要です。(3つめは特にピューリタン革命期において)
しかし、あまり歴史上の経緯ばかりを説明していて、万が一「北アイルランド問題は歴史的な怨念を引きずっているだけ」のような印象をもたれてもいかんので、現在の事をご説明します。但し、あまり新しい資料を持っていない点はご容赦ください。
1.住むところ
地域差がかなり大きく一概には言えないのですが、プロテスタントとカトリックはそれぞれ固まって住む傾向が明らかにあります。1991年の調査では、約70%のプロテスタントが、住民の70%以上がプロテスタントの地域に住んでいます。カトリックも、ほぼ同じ傾向です。
2.教育
現在、小中学生の約95%が、プロテスタント系かカトリック系かのどちらかの学校に行きます。別に日本で言うところのミッション系という訳ではなくて、プロテスタントが行く学校とカトリックが行く学校がかなり明確に分かれている、という事です。(制度的には、国の関与の度合いの違いによって、State,Controlled,Maintainedのみっつがあり、プロテスタント系は前者2つ、カトリック系は最後の1つに、事実上分かれています。)
3.結婚
公式の調査はないので、色々な数字があるし、また地域差も大きいのですが、結婚のうちの5%前後が異なる宗派間の結婚という研究もあります。
4.雇用
カトリックの失業率は、プロテスタントの概ね倍ぐらいです。2002年3月時点で、男性の場合、カトリックが9%、プロテスタントが5%。勿論、公式には宗派を理由にした雇用差別は禁止されていますが、はっきり目には見えない差別があると理解されています。
もっと全体の景気が悪かった1985~87年は、英国全体での男性失業率が12%、北アイルランドでは、プロテスタント男性は14%と全国平均とほぼ同じなのに対し、カトリック男性では36%と、恐ろしい数字になっています。
長々と書きましたが、単に歴史を引きずっているのではなく、現時点でも相当はっきりと別れた社会になっている、という事を、一応申し上げておこうと思いました。まぁ、当り前と言えば当り前なんですが、例えば、1960年代末にカトリック側に公民権運動が始まった頃から、双方の対立は深まりテロの応酬になりますが、住居の分離はその頃によりはっきりとしたものになっています。
お礼
ありがとうございました。 参考にします^^