道路交通法では、単に乗車用ヘルメットをかぶりなさいと書かれているだけで、排気量別の規定が無く、乗車用ヘルメットの規定に関しては内閣府令で定めるとなっています。 これをそのまま解釈すると、内閣府令で定めた乗車用ヘルメットをかぶってさえいれば、原付であろうと大型二輪であろうと、法令違反に問われることは無いと思えます。 現実に、あみだにかぶったり首に引っかけたりしただけのような場合以外、かぶっているヘルメットの種別で取り締まられた話は聞いたことがありませんし、後述しますが「取り締まりそのものができない」のです。
ところで法令では、なぜか乗車用ヘルメットに関してのものが2つあります。
1つは、先ほどの内閣府令である”道路交通法施行規則”によるもの。
もう1つは、”経済産業省関係特定製品の技術上の基準等に関する省令”によるもの。
後者には、前者の条文が含まれており、警察庁が決める道路交通法に基づいて、経済産業省が詳細を定めたもの、という見方もできます。 こちらには、125cc以下でしか使えないヘルメットとそうでないものが区別されています。
かなり長くなりますが、その全文を記します。
経済産業省関係特定製品の技術上の基準等に関する省令
乗車用ヘルメット(自動二輪車又は原動機付自転車乗車用のものに限る。以下「乗車用ヘルメット」という。)
1
(1) 衝撃吸収ライナー、あごひも(ひも状以外のヘルメット保持具を含む。以下同じ。)及び着装体(帽体、衝撃吸収ライナー及びあごひも以外のものをいう。)は、皮膚に有害な影響を与えないものであつて、かつ、ぜい化、膨潤、軟化等の変化が生じないものであること。
(2) 金具類は、耐食性のもの又はさび止め処理を施したものであること。
2
(1) 帽体の表面は固くなめらかであり、かつ、縁は丸みをもつているか又は縁巻きで覆われていること。
ただし、総排気量0.125リットル以下の自動二輪車又は原動機付自転車に乗車するときに限り使用するものである旨の表示をヘルメットの内面又は外面に容易に消えない方法により表示してあるヘルメットであつてハーフ形又はセミジェット形のもの(以下「小型自動二輪車等用ヘルメット」 という。)にあつては、帽体の表面をレザー等で覆うことを妨げない。
(2) 帽体の日本工業規格T8133(1994年)乗車用安全帽5.2.1(2)に定める保護範囲を覆う部分の形状は、曲率半径75ミリメートル以上の連続した凸曲面であること。ただし、縁巻き及び風防の取付け等のための必要最小限の凹凸については、この限りでない。
また、保護範囲を覆う部分以外の形状は、凹凸が著しくないこと。
(3) 衝撃吸収ライナーは、日本工業規格T8133(1994年)乗車用安全帽5.2.2に定める保護範囲を覆い、各部分の厚さがほぼ均一であり、かつ、帽体内面の曲面によく接着されていること。
ただし、適当な通気溝を設けることを妨げない。
(4) 帽体に表面に固定されたスナップその他の堅い突出物は、帽体の滑りを妨げることのないよう突出が十分小さいか、又は容易に外れる構造を有すること。
3
(1) 着用者の頭部によくなじみ、かつ、頭部を傷つけるおそれがない構造を有すること。
(2) 組立てが良好で、使用上支障のある傷、割れ、ひび、まくれ等がないこと。
(3) 左右の視界が105度以上あり、かつ、上下の視界が十分とれること。
(4) 風圧によりひさしがたれて視界を妨げることのない構造を有すること、また、走行中耳覆いが外れ、又は脱落することのない構造を有すること。
(5) ひさしのあるヘルメットにあつては、ひさしと帽体が一体でないこと。ただし、小型自動二輪車等用ヘルメットにあつては、この限りでない。
(6) 著しく聴力をそこねることのない構造を有すること。
(7) あごひもは、帽体に固定してあり、ヘルメットを頭部に確実に装着でき、かつ、チンカップが取り付けられていないこと。
4 質量は、頸部に負担がかからない適切な質量であること。
5 衝撃吸収性試験を行つたとき、次の表の(1)の欄に掲げる条件に適合すること。ただし、小型自動二輪車等用ヘルメットにあつては、(2)の欄に掲げる条件に適合すること。
5-1 2940メートル毎秒毎秒以上の衝撃加速度を生じないこと。
1470メートル毎秒毎秒以上の衝撃加速度を生じたときは、その継続時間は4ミリセコンド以下であること。
5-2 3920メートル毎秒毎秒以上の衝撃加速度を生じないこと。
1960メートル毎秒毎秒以上の衝撃加速度を生じた場合は、その継続時間は2ミリセコンド以下であること。
1470メートル毎秒毎秒以上の衝撃加速度を生じた場合は、その継続時間は4ミリセコンド以下であること。
6 耐貫通性試験を行つたとき、落下させた鋼製ストライカの先端と試験用人頭との電気的接触がないこと。
7 あごひもの強さ試験を行つたとき、あごひもは加えられた荷重により25ミリメートル以上伸びず、かつ、取付け箇所からの脱落又は損傷の発生がないこと。
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(1) 届出事業者の氏名若しくは名称又は経済産業大臣の承認を受けた略号若しくは記号が容易に消えない方法により表示されていること。
(2) 総排気量0.125リットル以下の自動二輪車又は原動機付自転車に限り使用するものにあつては、その旨が容易に消えない方法により適切に表示されていること。
(3) 安全に使用する上で必要となる使用上の注意事項が容易に消えない方法により適切に表示されていること。
この法令によると、原付用とそうでないかの違いは、ジェットタイプのひさしが一体で作れるかどうかと、帽体を革張りにして良いかどうか、という2点だけだと言えるでしょう。
わざわざ分けるほどのものではない、とは思いますが、道路交通法にはこの区分がなく、警察は道路交通法に基づいてしか検挙できないために、どちらのヘルメットをかぶっていても、きちんと装着されているなら取り締まることができないのです。
死にたい人は別として、そうでないなら普通二輪以上のクラスに半キャップは論外だと思いますが。
お礼
これぞまさしく法律面のことが書かれていて 知りたかった点が明確になってて、納得できました。 ありがとうございました。