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輸入楽譜について

素朴な疑問なのですが、何故Schimer版はこんなにも安いのでしょうか。。。 理想としてはヘンレやペーター、ウィーン版が欲しいなと思ったりする時も、ついついだいぶ安いSchimerにしてしまったりします。後になって図書館で原典版や他のと比較したりしているのですが。。。 だいぶエディットされています。。。

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回答No.1

こんにちは。 楽譜の作成には様々なコストがかかります。単純な話、シャーマー版は、ヨーロッパの出版社の楽譜と比べて、多少紙質がよくないですね。しかし、それ以外にもいろいろな点で、コストの差が出ていると思います。 まず、校訂、編集に掛ける手間ですね。ヘンレ版の原典版やウィーン原典版の場合、一流の音楽研究家が、作曲家の自筆楽譜や、過去に出版されたたくさんのエディションを調査して、詳細な校訂報告とともに細心の注意を払って編集されています。指使いについても、ピアニストに依頼して新たに書き込んであります。こういう念入りな原典版などは、やはりヨーロッパにその研究の伝統があります。アメリカの出版社であるシャーマーには、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンといった古典の作曲家の徹底した原典版はたぶんなかったはずですし、基本的には「実用版」「教育版」といって、一般の学習者の便宜を図って、一人の校訂者がかなり主観的な解釈で編集したものが多いでしょう。底本も明らかにされていないものもありますし、原典とは一致しない個所も多いはずです。したがって、編集段階でかかるコストが違うのは明らかです。また、ヨーロッパの出版社は、最新の研究をもとに時々新版を出します。この場合、新たな編集については著作権が発生します。シャーマーから出ている古典の作曲家の楽譜の多くは、すでに著作権がなくなっており、インターネットに無料公開されているものもあります。 もう一つは浄書の問題ではないかと思います。楽譜の浄書については知らない人が多いと思いますが、文字の書物と違い、どんなにきれいな楽譜でも活字のようなものを使って印刷しているわけではなく、原板はすべて手書きでした。日本などでは、スタンプを使う浄書法もあったと聞きますが、基本的には、五線も全部手で引き(段ごとの間隔が違うので、五線紙を使えるわけではありませんから)、音符も一つ一つ手書きです。しかし、単なる楽譜書きの職人ではミスが起きます。やはり、音楽の知識が必要です。シャーマー版は、ヨーロッパの出版社と比較すると、浄書ミスが多いと思います。また、楽譜の美しさの点でも、明らかに手書きとわかるような、洗練されていない浄書もあります。浄書家の腕や、浄書に掛ける時間も違うと考えられます。最近は、楽譜の浄書はすべてコンピューター化されたので、コストも下がり、見た目も、どこの出版社もある程度きれいになりましたが、それでも伝統的の浄書の美しさを知っているかいないかで、読みやすさにはかなり差が出ます。 ただし、シャーマー版がすべて悪いということではありません。一応歴史は長いので、研究資料として価値があるものもあります。例えば、ショパンの弟子、ミクリが校訂したショパンの楽譜などは、今でも参照されます。楽譜そのものは、研究が進んでいない時代のものなので問題がありますが、ショパンの意図がある程度伝わっているということで、参考資料にはなります。また、アメリカの出版社なので、アメリカの作曲家を中心に、近代から現代の作曲家と契約を結んでいますので、シャーマーに属する作曲家の楽譜は、基本的にシャーマー版でしか入手できません。 プロの場合、古典の作曲家に関しては、シャーマー版だけを使うということは考えられません(私はほとんど持っていません)。また、作曲家により、作品により、いろいろな版をそろえて比較しなければなりません。たとえばバッハの「平均律」でしたら、私は若いころからヘンレの原典版を使用していましたが、その後ウィーン原典版が出て、その校訂報告を読んで修正する必要がある箇所が出てきました。ただ、指使いはヘンレに慣れてしまっているので、普段はこれを使っています。ほかにも、ベーレンライターの新バッハ全集がありますし、楽譜代はいくらあっても足りません。モーツァルトについては、ウィーン原典版も使っていましたが、ザルツブルクのモーツァルト財団が、ベーレンライターから出ている新モーツァルト全集の版権を買い取って、インターネットでの無料公開に踏み切りましたので、助かっています。 御質問の趣旨からは離れますが、安いからといってシャーマーばかり購入すると、あとで買い直さなければならなくなります。著作権の切れているシャーマー版はインターネットで参照できますので、そこに出ている作品は、ほかの出版社のなるべく新しいものを購入なさることをお勧めします。 無料楽譜サイト http://imslp.org/wiki/Category:Composers 先述のミクリ校訂のショパンや、ツェルニー、ブゾーニの校訂によるバッハの「平均律」などのシャーマー版は、上のサイトで参照できます。

Emma_san
質問者

お礼

非常に詳しい回答をありがとうございます。なるほど納得です。紙質は昨今のはだいぶ良くなってますね。ヘンレ版より表紙とかもしっかりしているし。確かに後の祭りで別の版が欲しいと思う事はありますが、どうしてもお値段がかなり違うのでついついシャーマーに頼ってしまう所があります。安いなりにこういう事情があったのですね。原典版=オリジナルに手を殆ど加えていないという解釈しかなかったので、その裏の手間故に高価な物とは想像もしていませんでした。ありがとうございました。

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