もともとの、「歌舞伎」というのは、字で表すように、歌と踊りでした。
今でも歌舞伎では、お芝居とともに踊りが上演されます。
この「踊り」の伴奏として発達したのが「長唄」です。
伴奏には「細棹(ほそざお)」と呼ばれる、弦の細い高い音が出る三味線を使い、
メロディアスな節回しで高い声で歌います。
初期の歌舞伎作品が「傾城買い(けいせいがい)」、つまり遊郭で高級遊女と華やかにたわむれる様子を描いたものが主流だったのもあり、
やはり男女の恋愛感情を描いた叙情的な作品が多いです。
歴史物や敵討ものような骨太な内容の作品も多少はありますが、主人公と恋人との場面を描くほうが多いです。
浄瑠璃というのは、歌舞伎でもやっていますが、もともとは文楽、人形劇の作品です。
詳しく言うと、近世初期に「語り物」として発達したものです。
もとが「語り」ですので、視覚的な華やかさよりも内容の面白さを重視します。
なので重厚な歴史物が多く、男女の恋愛物語でも周囲の人間関係までも書き込んだオトナっぽい内容です。
というわけで、「浄瑠璃」は音も重厚です。
「太棹(ふとざお)」や「中棹(ちゅうざお)」と呼ばれる低い音の三味線を伴奏に、低い声でうなるようなかんじで「語り」ます。
これらの「浄瑠璃作品」は、ストーリーがしっかりしていて内容内容がおもしろいので、歌舞伎に移入されました。
いまもふつうに歌舞伎作品として上演されますが、
そういうわけで「浄瑠璃」は、もともと人形劇のためのナレーションやセリフを語るものであり、さらにその前は人形すらいない、純粋な「語り物」でした。
おおまかに
長唄→踊りの伴奏の「歌」。高い音。叙情的
浄瑠璃→文楽由来のお芝居の「ナレーション(一部セリフも言う)」。低い音。重厚
というかんじになります。
ただ、
浄瑠璃作品はもともとはどれも長く、作品中に「道行(みちゆき)」という踊りがあります。
この「道行」は浄瑠璃を伴奏に踊るので、「長唄」の踊りとどう違うのか混乱することもあるかと思います。
ご質問の理由もこれかもしれません。
成立の経緯が違うということでご理解いただくといいかと思います。