コンピュータの将棋と言っても、将棋ソフトそのものの実力は、現在のところプロ棋士に遠く及びません。
プロレベルで言う将棋コンピュータ利用というのは、過去に指された将棋の棋譜を管理する情報処理能力ではないかと思います。情報処理能力という点で、現在の棋士は格段の進歩を遂げました。
ずっと以前、関東の棋士と関西の棋士では、将棋の質にかなり違いがあったと聞いたことがあります(現在でも「関西流の粘りの一手」というような表現をまれに耳にします)。これは情報の流通がなされず、遠方で指された将棋がどういうものだったかを知る術が無かったためです。
また棋士個人が棋譜を得るためにも、手で書き写す必要がありましたので、ひとりが処理できる情報の量というのは限界があったでしょう。……これが第一段階。
コピー機やFAXの登場で、遠方の棋譜でも希望すれば当日にでも送ってもらえるようになりました。希望の棋譜を好きなだけ手に入れることができ、自分で盤に並べて(あるいは頭の中で並べて)、興味ある戦型を見つけてそれを深く研究する。……これが第二段階。
コンピュータ利用が普及した現在は、棋譜データベース管理ソフトが棋士に用意され、過去の棋譜が入力された棋譜データ(将棋連盟職員? がかなり過去まで遡って入力しているそうです)を入手すれば、自宅のパソコンにすべての情報が入っているということになります。
また、最初にデータの中を見て(つまり並べて)必要な棋譜か不要な棋譜かを判断する手間もありません。最初に必要とする条件を入力(対局者名、戦型、対局時期などの条件はもとより、局面指定(例えば1九に先手玉だけ配置すれば、一度でも▲1九玉が実現した将棋がすべてヒット)も可能)さえすれば、自分の必要とする将棋の情報が一覧表示されます。これをモニタ上の盤面で自動再生すれば、第二段階で棋譜を並べるよりはるかに高速に「棋譜並べ」をすることができます。この中で特に気になったものだけ、将棋盤を用いて実際に手で並べてみる、という使い方をしている人いるでしょう。
過去の棋譜を研究する、というのは棋士の勉強法としてはポピュラーなものですから、いちはやくコンピュータの利用を導入して効率よく研究した若い世代の棋士の勝率が高いというのは当然といえば当然です。
今後、コンピュータ利用が当然となり得る情報量は皆同じ、となったら、着想や情報の取捨選択能力で成績に差が出るのでは? と思っています。
お礼
これだけ詳しく説明していただけるとは思ってもいませんでした。ありがとうございます。 コンピュータの活用は将棋どころか全ての業種にその必要性が認められるのかも知れないですね。(すごくそう思います。)