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氷河サイクルと公転軌道
- 過去80万年の氷期のサイクルにおいて10万年の周期が最も多い離心率ですが、10万年周期の離心率は軌道の効果としては最も弱いといわれてます。
- これは、軌道の効果の規模が最も弱いといわれていても80万年の氷期のサイクルに及ぼす10万年周期の離心率が地球上に及ぼす規模を表していると仮定することはできますか?
- また、仮定できた場合10万年以上の周期でおこる離心率が地球上に及ぼす規模として考えられる状態はどのようなものがあるのでしょうか?
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氷期には極地が寒冷になり、寒帯前線の低緯度への移動によって熱帯、亜熱帯がせばめられ、大気の大循環が弱まりますが、その原因として一方に地球自体にかかわりをもつ仮説があります。 (1)新生代の地殻変動に原因があり、それによって隆起した陸地の部分は気温が低下するし、そのような山脈の出現が大気の大循環を変えたという説。 (2)第四紀火山活動における火山塵の増加による遮へい効果が原因という説。 (3)海洋水の循環が影響するという説として、南極大陸の氷床が大量に海へすべりこんだという考え、またメキシコ湾流による北極海の暖化によって湿度と氷雪の増加が起こり、そのために北大西洋をはさむヨーロッパとカナダに氷床ができた。 どれも十分に実証しにくいものばかりです。 他方の氷期成因説は天文学的なものは以下のようなものです。 (1)太陽活動の変動による説。 (2)高濃度の宇宙塵空間を地球が通過したため遮へい効果が増加したという説。 やはりどちらも検証しにくい仮説です。 現在のところ可能性の高い説は、夏半年の日射量の減少が原因になる、という W.ケッペンの意見をいれてM.ミランコビッチが提出した仮説です。 それによれば、次の三つの要因の組合せで日射量の変化が生じるとしています。 (1)歳差運動で分点は地球の公転方向と逆回りに移動している。 近日点と分点が一致すれば夏・冬両半年は同じ長さだが、分点の位置で両半球の季節の長さが違い、したがって日射量が両半球で違ってくる。この分点の移動周期は2.2万年。 (2)離心率の変化による。 離心率をe、軌道の長軸半径を1とすれば、近日点、遠日点での太陽・地球間距離は1-e、1+e です。太陽の日射量は距離の2乗に逆比例し、e が6~7%と極大のときには、近日点の日射量は遠日点のそれより30%も大きくなります。この離心率の変化の周期は105年です。 (1)の分点の位置と(2)の離心率との変化の組合せによって、夏・冬両半年の季節の長さの差は70日以上にもなることが確かめられています。 (3)日射量はこのほかに地軸の傾き(その変化の周期は4万年)が影響します。傾斜は現在23.5度ですが、24.5~21.5度の範囲で変化します。傾斜が小さいと高緯度の夏半年は日射量が少なく冷涼になります。 ミランコビッチはこれら歳差、離心率、および地軸の傾斜の周期の組合せによる夏・冬の日射量変化を曲線にして、緯度10度ごとに100万年前まで南北両半球について求め、氷期、間氷期の出現を説明しました。 なお、地質学的には、南極の氷床の年代が古第三紀の約4000万年前にさかのぼることがわかっています。 また新第三紀中新世にはじめてアラスカに氷河が発生しています。このことは南極氷床が拡大し、それが北半球に気候悪化をもたらしたことを物語っています。 深海底コアの有孔虫殻の酸素同位体比にもとづいたδ^18-Oと呼ばれる曲線はミランコビッチの日射量変化曲線と符合することから、氷河時代の原因はいっそう確実な解釈がえられそうです。