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ロシア革命の功とは?
- ロシア革命の功とは、人民に幸福をもたらしたかについて総括されていない問題です。
- 共産主義による粛清や犠牲は否定できませんが、革命によって幸福を感じた人々の存在も考慮すべきです。
- また、ロシア革命は革命芸術の興隆をもたらし、素晴らしい作品も生み出されたとされています。
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学生時代(まだソビエト連邦が健在だった時代)に出会ったロシア革命の研究者は、「生まれ変わったらソ連でトラクターの運転手になりたい」と言っていました。その人によれば、ソ連は能力と意欲を持った人間には牢獄かもしれないが、そうでない人にとっては結構暮らしやすい国なのだとか。ちなみに、この人は別に共産主義者ではありませんでした。 そのような国であったことは、ロシア革命の「功」と言えるのかもしれません。ちょっと強引ですが。 ロシア革命についてはさまざまな見解が出されていますが、わたしは基本的に近代化論のロシア版なのだと理解しています。 後進国が近代化するにあたっては、近代産業を育成する、近代国家の体制(軍隊をふくむ)を整える、などのために莫大な資本が必要になります。しかし、後進国にそれだけの資本はありませんから、外国の援助がないときはその分を国民から広く吸い上げなければなりません。国民の側からするとそれは苦痛でしかないので、当然のごとく強い反発を呼びます。 しかし、近代の国際環境において国民国家すなわち近代国家の利点は明白であり、これに失敗すれば植民地か属国になるしかない現実もまた明白だったのですから、国家の指導層はなんとかこの苦痛に耐えるよう国民を説得しなければなりません。 日本は明治維新で近代国家へと歩み始めた(「富国強兵」「殖産興業」)わけですが、この説得をつまるところが天皇制のイデオロギーで行なったのだと、海外の近代化論の研究者が指摘しています。 いっぽう、ロシアにおける近代化はそれ以前、ニコライ2世のもとでもとり組まれていましたが、ツァーリ(皇帝)体制は結局これに失敗します。体制側の旧態依然たる無能力、単なる不運、体制打倒の意志を固めた革命勢力の存在、第一次大戦の重みに耐えられなかったこと、などが理由として考えられるところでしょう。 それに対してボルシェヴィキは共産主義の理想のもとに強固な支持者を結集し、革命から内戦、干渉戦を戦い抜き、ソビエト国家の確立にいたります。この一連の過程で「共産主義」はツァーリ体制のそれよりも説得力という点で勝ったわけです。 レーニンの死後、共産党指導部の中でもっとも非マルクス主義的なスターリンが権力を掌握し、「革命」を推しすすめます。この過程においても、建前として国民を説得したのは共産主義の理想でした。現実はスターリン体制のテロルだったかもしれませんが。 しかし、ロシア革命の本質はあくまでも近代であり、その点で成果を上げたから国民は最終的にはソビエト国家を支持したのだと考えます。共産主義はこの過程での道具立てであり、説得する手段だったのだと思います。当人たちがいかに真剣に信じたにせよ。 という見解の持ち主からすると、ロシア革命の「功」とは、すなわちロシアが近代化した事実なのだと言えるでしょう。農業国から工業国への転身、飛躍的な経済成長、識字率の上昇に代表される文化水準の向上、第二次世界大戦でのナチスに対する勝利、「超大国」になったこと、などが上げられます。 しかし問題は、これらははたしてボルシェヴィキ体制でなければ実現しなかったのか疑問だという点です。ツァーリ体制はさておいても、二月革命後に誕生した立憲国家としてのロシアでも達成できたと主張する研究者も多いですし、現実が示すとおりボルシェヴィキでなければ国をまとめられなかったのだと考える人もいます。 わたしには、どちらが正しいのか判断がつきません。 それにしても、あれほどの犠牲を正当化することはできませんね。歴史ですからいまさら言っても仕方ないのですが、過剰なイデオロギーがなにをもたらすのか、私たちは肝に銘じるべきでしょう。 もしかしたら、それを教えてくれた点もまたロシア革命の「功」と言えるのかもしれません。 学生時代にもどった気分でつい長文回答になりました。失礼しました。
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- sync-mag
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No.3です。 「お礼」での疑問はまさに近代化論の核心をつくものと受け止めましたので、再度失礼します。 よく「歴史にIFはない」と言われますが、IFを考えることは問題を理解するよい手がかりになると思っています。 しかし、この問題は少し考えてみたのですが、わたしにはわかりません。 >ツアーリ体制では近代化は無理だった、 →弾圧と改革をともに進めたストルイピン首相の時代(1906~1911)がもっと続けば、ロシアはツァーリ体制のまま近代化を為しえた、と主張する人もいます。というより、近年のプーチン氏の統治を高く評価して、さかのぼって似たような政治家としてストルイピンも評価する人が増えているようです。 しかし、現実に彼は暗殺されてしまいましたし、彼の改革に対する反発はとくに農村部で根づよく、かつラスプーチンの跳梁を許すような当時の宮廷の無能ぶりは、彼の改革を支える基盤がいかに薄く狭かったかを証明していると思います。ですので、わたしの個人的な意見としては、失敗は避けられなかったほうに傾いています。 >幕府のままで(大政奉還はあったとして)、日本の近代化はあり得た、と思っています。 →これは興味深い問題提起だと思います。歴史書を読んでいるかぎり、明治の維新政府が信じさせたがっていたほど幕藩体制が無能であったとは思えないので、これは充分にありえる想定だと、自分でも考えたことがあります。 たしかに幕府が存続したまま近代化が実現していたら、あれほど強力な中央集権国家が築かれることもなく、もっと弱体だけどもっと分権が進んだ、そしてもっと多様な意見を許すようなあたりまえの国になっていたのではないか、と夢想したりしました。 日本の場合は広範な国民運動の結果明治維新にいたったわけではないので、もっぱら支配層の個人の役割に理由を帰すべきなのか、つまり登場人物が違っていたら、あるいはもう少し違う行動をとっていたら結果も変わったのか、と考える一方で、遅れて近代化を果たしたドイツとロシアがともどもに軍事に偏重した超集権国家にいたった事実からは、多少の違いはあってもこっちしか途はなかったのかもしれない。 などと思うのですが、やはり答えは出ません。 ただ、官僚制国家としての日本(丸山真男は大日本帝国の本質を天皇制でもなければ軍国主義でもなく、これだと分析しています)だけがありえた選択肢でなかったのはまちがいないと思います。 あと、当初のご質問にありました芸術について、「牢獄は詩人にとっての楽園だ」という言葉を思い出しました。自由が制限された国でこそ自由に対する欲求は高まり、命がけのすぐれた芸術が生まれる、という意味でいわれる皮肉です。 真理というほど正しいとも思えませんが、いっぽうでショスタコーヴィチがほかの国で生まれていたらあのような楽曲はつくらなかっただろうという意味では、あながちまちがってもいないでしょう。学生時代に初めてソルジェニーツィンを読んだときの衝撃も忘れられません。 芸術家にとって、特にスターリン時代が過酷であったことはまちがいありませんが、ロシア革命がなければ生み出されなかった作品群があるという意味では、これもまたロシア革命の「功」なのかもしれません。
お礼
補足ありがとうございました。 私の考えを理解してくれる人は居ないものと思っていましたが、ついに現れたという気持ちです。 そこでもう少し、追加しますと、私は「近代化」は、「唯物史観でいうところの、歴史の必然」と考えています。 近代化は、個々の人間の意図や意志とは独立して、時代の流れとして、条件さへそろえば、必然的に起こる現象と考えています。 条件というのは民族意識の覚醒だ、という独創仮説です。
- hekiyu
- ベストアンサー率32% (7193/21843)
”共産圏が崩壊した現在、革命思想を信じる人はもう居ないでしょう” ↑ それがそうでも無いんですよ。 あれは、資本主義が未成熟の国家だったので失敗したのだ。 日本や欧米のような国でやれば成功する、と言っているひとが 大勢います。 ま、弁証法的にはその通りなんですが。 ”しかし一昔前までは、革命を叫んでいた人が日本にも沢山居て、 その人たちには未だに革命のロマンが忘れられない気持ちが 残っているように思われます。” ↑ そういう人達は、環境問題やジェンダー問題に移動しています。 ”「功」の方が総括されていません” ↑ 不況で苦しんでいた資本主義諸国を尻目に、社会主義国家はめざましい 経済成長を遂げていました。 これを目にした資本主義諸国は焦り、各種の労働立法を始めとする 社会福祉に力を入れるようになりました。 つまり、修正資本主義になったわけです。 これが「功」といえば、言えるでしょう。 後、ソ連が米国に対抗するため、宇宙に進出するようになり、競争原理 が働いて、宇宙関係の技術が発達したことも功だと思います。 芸術はどうなんですかね。 社会主義国の芸術は、暗いのが多いのであまり好きではありません。
お礼
ありがとうございました。
補足
ずいぶん納得できるまとめをありがとうございました。 しかし今のロシアが、社会主義国だ、と言える点はどういうところを指すのでしょうか? 国家統制経済が行われている、というようなことを具体的に教えてほしいものです。
- fujic-1990
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> 人民が革命によって幸福になったということを証明する作業は出来ているのでしょうか? 「人民」が、「革命がおきた国の人民」の意味なら、幸福になっていないので、幸福になったことの証明は不可能だと思いますよ。 反革命国、というか、革命が起きていない国々の人民の意味なら、画期的に幸福になったと思います。 正確には、幸福になり始めたと言ったらいいでしょうか。 それがつまり、ロシア革命の「功績」だろうと思います。 ロシアにおける共産主義革命の勃発によって、他の国々は共産主義革命の恐ろしさを認識し、同時に「労働者階級を懐柔すること」の必要性を初めて認識して、以後「社会主義政策」と言われるものを取り入れ始めたからです。 と、高校の先生が言っていましたね。 (^o^; いま、ここでも度々質問されている「生活保護」などという考えも、革命以後の制度でしょうね。 ついでに言うと、戦後に自由民主党が長期政権を樹立できたのも、社会党などがいう社会主義的政策を(7掛けくらいで)どんどん取り込んできたのも一因である、とも言ってらっしゃいましたね。 芸術については・・・ 、よく知りません。 少なくても私がロシアへ行って、見てきたいものはなんでも、全部革命以前のものばかりです。
お礼
ありがとうございました。 参考になりました。
お礼
問題意識がピタット一致しました。 革命=近代化論に同感です。 もっと言えば、革命というイデオロギーが国民の支持を集めた、というよりは、近代化思想が主導で、それに合致した範囲でのみ革命思想が有効だった、という気がします。 ツアーリ体制では近代化は無理だった、ということが書いてありますが、私の仮説では、幕府のままで(大政奉還はあったとして)、日本の近代化はあり得た、と思っています。 その方が、アジアへの侵略は無かったかもしれない、中央集権化も穏やかでもう少し幕藩体制(地方分権)の日本があったかもしれない、と思っているのですがいかがでしょうか? ありがとうございました。