会社は、賃金の額、氏名、労働日数、労働時間数、
基本給、手当その他の金額等につき、賃金台帳を
作成して記載し、その台帳は、少なくとも3年間は
保存しなければなりません(労働基準法109条)。
これがいわゆる「法定3帳簿」といわれるもののひとつですが、
この法定3帳簿には、給与明細が含まれていません。
したがって、給料明細を作成する義務も、従業員に
発行する義務も、会社にはないことになります。
しかし、 健康保険法167条3項には、
「事業主(会社)は、前2項の規定(1項:給料、2項:賞与
から保険料を控除できる)によって保険料を控除したときは、
保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を
被保険者に通知しなければならない。」
厚生年金保険法84条3項には、
「事業主(会社)は、前2項の規定(1項:お給料、2項:賞与
からの保険料を控除できる)によって保険料を控除したときは、
保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を
被保険者に通知しなければならない。」
労働保険の保険料の徴収等に関する法律(労働保険料徴収法)31条1項には、
「事業主(会社)は、厚生労働省令で定めるところにより、
…当該被保険者に支払う賃金から控除することができる。
この場合において、事業主は、労働保険料控除に関する計算書を作成し、
その控除額を当該被保険者に通知しなければならない。」
という規定があります。
つまり、健康保険法・厚生年金保険法・労働保険料徴収法は、
各保険の保険料を給与から控除することができる旨定め、
会社は給与から各種社会保険料を控除するわけですが、
健康保険法・厚生年金保法・労働保険料徴収法(雇用保険)
各法により、給与から保険料を控除したときは、計算書を
発行する必要があるのです。
条文によれば、厚生年金保険の保険料控除の計算書
・健康保険料の保険料控除の計算書・労働保険(雇用保険)の
保険料控除の計算書の、計3通の計算書を発行する必要があります。
これらの計算書には、総支給額及び控除額が記載されるわけですが、
同じ様な内容の計算書を3通も発行することは、会社としては
非常な手間です。
また、計算書を発行する必要のない所得税等の関係で、
各計算書に記載された控除額を合計しても、支給額(手取額)
にはなりません。
そこで、 これらをまとめて給与明細に一括記載することが
慣行となっているのです。
もともと法定の書類ではない給与明細ですが、給与に関する
トラブル防止のため、給与の計算の基礎となる部分も明示するように
なりました。
基本給や時間外手当等も記載されるようになったわけです。
というわけで、会社に「保険料控除の計算書」を請求すれば、
会社は拒否できません。
通常の会社では、保険料控除の計算書を3通も発行するより、
それに代えて給与明細を発行すると思われますが、いずれにしても、
正確に給与を把握する資料が入手できることになります。
お礼
なるほど 非常に参考になりました。ありがとうございます。基本的には、支払日までには渡すべきですね。