講師が持っている1部のテキストを複数の受講者のため複製して貸し出すなら,複製権の侵害です.
しかし,ある部数(受講者数に満たないとしても)のテキストを購入して持っており,それらを貸し出すということに限定して考えると,複製権の問題ではなくなります.
著作権の中の貸与権の侵害に該当するかが検討の対象です.
「第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。」
つまり,貸与権という著作者の権利を侵害するかどうかが問われます.
貸与権の規定は,貸レコードや貸本業の進展に伴って改正がされてきました.
上の規定をご覧になると,貸与としては「公衆への提供」がポイントです.有料の市民講座ならそれほど多数ではないと仮定すると,「特定かつ少数」なら公衆とされないので,貸与権は及びません.
また,営利ではあっても,その講座の開催日にその出席受講者に,その場で貸してその日の終了時に回収するのであれば,そのテキストの占有が講師側にあると見なされ,貸与権が及びません.これは,喫茶店,美容院,食堂などでの漫画本の貸し出しに似ています.
しかし,講座の会場から外部に持ち出すとか,受講者の自宅に持ち込むなら,その場合は貸与と見なされるでしょう.
また,その講座が非営利であって,無料でそのテキストを貸与するなら,公衆であっても,貸与権は及びません.(第三十八条4項)