Q1.・・・NO
よほど大きな政治的変動がロシア、または日本でおきない限り現状のままだと思います。
可能性は低いでしょうが、ロシアで大規模な内戦でも起きて分裂し、そこで日本が外交上の駆け引きでうまく立ち回って返還が実現するとか、また、これも可能性は低いですが、これから先、日本政府がロシアとの友好関係を優先して北方領土の返還を諦めるというような事が無い限りは、このままの現状が続くと思います。
Q2.・・・解決しない理由はロシアにとって北方領土が軍事的、経済的に重要な場所であり、日本に返還する事はないだろうと考えるからです。
軍事的理由・・・旧ソ連時代からソ連海軍、現在のロシア海軍には戦略核ミサイルの運用において聖域構想というものがあります。これはオホーツク海にアメリカ本土を攻撃できる戦略核ミサイルを搭載した潜水艦を配備して、核抑止力とし、また核戦争が起こった場合はそこから攻撃し、太平洋のアメリカ海軍などの敵対する勢力からは、カムチャツカ半島、千島列島のラインでオホーツク海への敵の侵入を防ぎ戦略核ミサイル搭載潜水艦を守ろうというものです。
つまりオホーツク海を敵の手の届かない聖域にしようという戦略です。
オホーツク海はカムチャツカ半島と千島列島により太平洋とは隔てられており、旧ソ連、現ロシアの内海と言っていい海域です。もし、北方領土を返還すると、千島列島によりできていたオホーツク海の防衛ラインが崩れます。北方領土の国後水道、択捉水道を通って、アメリカの攻撃型原子力潜水艦がロシアの戦略核ミサイル搭載潜水艦を攻撃しにくる可能性が高くなります。アメリカの攻撃型原子力潜水艦の重要な任務の一つが、戦略核ミサイル搭載潜水艦の攻撃です。
また、その逆に国後水道、択捉水道はロシア海軍が太平洋に出撃していく重要な出口であるとともに、カムチャツカ半島の太平洋側にあるロシア海軍の重要な戦略基地であるペトロパブロフスクへの海上・海中交通路の要でもあります。
つまり、もし北方領土が日本に返還された場合、オホーツク海の戦略核ミサイル搭載潜水艦への危険度が増し、ロシア太平洋艦隊は太平洋への出撃路を失い、さらにはペトロパブロフスク基地への海での交通路も失う可能性が出てきます。
日本がアメリカと安保条約を結び、極めてアメリカに近い関係にあるならこの危険性は見逃せません。
旧ソ連時代の冷戦は終わりを告げましたが、現在はロシアとアメリカとの間に新冷戦が勃発しています。
そういった新冷戦構造にある現在の情勢では軍事的見地から言えば、北方領土を返還する事はロシアにとりリスクばかりで良い事は一つもありません。
経済的理由・・・ロシアは2003年に千島列島中央において油田、ガス田の調査を行い、有望な石油・ガス資源がある事を確認しました。北方領土のある千島南部にも油田、ガス田があると推定されており、開発が計画されています。そして2006年からクリル(千島列島)発展経済計画という経済政策を行い、北方領土へもかなりの投資を開始しました。
これは連邦予算で2015年までに150億ルーブル投資される計画でしたが、去年、予算の追加が決定され、それは130億ルーブルという、もう殆ど最初の予算に匹敵する額に決まりました。これは連邦予算だけで、北方領土を管轄するサハリン州も資金を投資しています。
北方領土には有望な鉱物資源もある事から、その開発を進める計画も立てられています。
国際空港も建設しています。
もともと北方領土は海産物等の海洋資源も豊富ですから、そうした工場もあり、重要な産業となってもいます。
つまり、北方領土には、海洋資源、鉱物資源、ガス・石油のエネルギー資源があり、ロシアはどんどん投資をしています。
そのような資源に有望な地を簡単には手放さないでしょう。手放す気がないからこそ、どんどん投資しているのだと思います。
以上のような観点から現状ではロシアが北方領土を返還する事はないと判断しています。
お礼
詳細な回答ありがとうございました。 現実は厳しいですね。