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憲法27条の勤労の義務に関して質問です。

芦部信喜『憲法 第五版』(岩波書店)の267頁には 憲法27条で 「勤労が国民の義務であることを宣言し(法律により勤労を国民に強制することができるという意味ではない)」 とあるのですが、なぜ法律によりそれを国民に強制できないのかが書かれていません。 近現代の人権思想や憲法18条との整合性の問題だとは思うのですが、もう少し正確に理解したいので、どなたか学説等を説明していただけませんか? 有用な文献等もご存知でしたらお教えください。

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回答No.4

「プログラム規定」とは精神的な理想を謳ったもので、義務と宣言していても義務を履行させる強制力を予定していないためです。小生も芦部先生時代の憲法を学部で学んだのですが、「なぜ強制できないか」という疑問については勤労の権利に法的効力を伴わせることが出来ないことと、勤労の義務に同様の効力を伴わせることが出来ないことが「対」になっているためだと理解するしかない、というのが憲法原理を学んだときの答えです。  働くことが尊いのは当たり前で、働かずに食える者でも無為徒食せず働けば尊いことに変りはなく、その尊さの実践を憲法は求めているのですが、しかし日本国憲法は無為徒食の価値を否定しているけど法律で禁止していませんね。日本国憲法が私有財産制度を保障した資本主義体制を選択した以上、国民は自分がもし25条が定める健康で文化的最低限度の生活を求めるなら、それが「権利」であると規定されていても一義的には労働して対価たる報酬を得、それによって健康で文化的な最低限度の生活を営むことを要請していると考えなければなりません。  そうすると、適切な表現が見当たらないので敢えて使用しますが、27条1項が憲法の積極的精神を謳ったものなら、憲法が価値を認めない消極的精神が貴方の指摘する生活保護法や失業保険の働きに現れているということになります。  つまり、勤労の義務が生存権の実質化を目指しているのなら、適切な仕事や職場があり、その提供が為されているのに正当な理由なしに勤労の義務を拒否する者には生活保護を与えず(または打ち切り)、失業保険の支給を行わないという方法で勤労の権利と生存権の保障を与えない、という制度に現れているということです。我々の憲法学はそういう理解でした。社会的基本権などという言葉も使われていますが、言葉で規定されるものではなく、精神と働きで内容が決まるものです。  ところで18条のことですが、これは書かれているとおり、奴隷的拘束を受けないことと刑罰以外で苦役させられないということで、帝国憲法下ではこうした権利が認められていなかった為(認められていても無視したかもしれませんが)奴隷的拘束を伴う所謂「蛸部屋」労働が珍しくなく、また多くは人身売買によったであろうお女郎さんなどが当たり前になっていた反省です。苦役とは、いまなら「強制労働」と訳していいでしょう。ですから、27条の勤労の義務と18条は別のものです。  日本語には、こうした拘束を受けないとか自由であるという場合を区別する適切な言葉が見当たりませんが、18条が「★☆から解放」を意味する自由の liberty で、27条は「自分が自由に行動できる積極性」を意味する freedom の規定だと理解できます。

nkrpokkp
質問者

お礼

勉強になりました。 ありがとうございます。

その他の回答 (3)

回答No.3

第27条は、いわゆる「プログラム規定」で、「こうあれかし」と願う精神的な要請です。 社会主義諸国の憲法、例えば旧ソ連の憲法第12条は「…働かざる者は食うべからずの原則に従って…」と、実際に働ける人が働かない場合を明白に認めない憲法でしたが、日本国憲法21条の勤労の義務はそのような強制力を伴った義務ではありません。簡単に説明しましょう。 理由は、労働の能力がありながら怠って労働しない者に対して国が労働の機会を保障する必要はないという考え方、つまり勤労の権利が法律上の権利でないことに対応したものだからです。 また、私有財産制度を保障する以上、働かなくても食える人はいるわけで、日本国憲法が私有財産を前提とする経済体制を採用している限り財産があるため働かないで食える者の存在を認めていることになります。 さらに職業選択の自由も関係していて、国民は望まない職業に就く義務もないのです。 というわけで、第27条は精神的要請以上のものではありません。

nkrpokkp
質問者

補足

ご回答ありがとうございます。 ただ下の質疑応答等を読むと「国は1993年以後,『勤労の義務による生存 権制約説』を採用し」ている、という報告があるようです。 163頁、内野正幸 http://www.globalcoe-waseda-law-commerce.org/activity/pdf/21/19.pdf 生活保護法の4条や60条等はその理念を体現した条文と呼べるのではないでしょうか? http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO144.html

  • hekiyu
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回答No.2

憲法は勤労の義務を定める一方で、各種の 自由権も定めています。 勤労の義務はあるが、それは他に定めてある 自由権とのかねあいで理解しなければなりません。 働く働かないは、本人の自由だろう、という考えも あります。13条。 それに、強制的な義務だとすると、雇う側には雇用する義務が 発生しかねません。 それを否定するとなると、国がそれを保障する手だてを 設定しなければなりません。 それは自由主義を採っている憲法全体に反することに なりますし、第一不可能です。 社会主義国だって失業者はいたのですから。 それで、義務だけれども、強制してまでやるべき 義務ではない、という解釈になる訳です。

noname#159030
noname#159030
回答No.1

勤労を国民に強制すれば、社会主義国と同じになりますし義務ではあるけど自由権で職業選択の自由で 職業を選ぶ権利との兼ね合いだと考えます。 法律で強制となれば企業にかなりの負担を強います。 強制となれば、拒否権も無い。つまり採用しかないわけです。給与も生活を出来る給与以上出さなければ いけないことになります。 現在では雇用機会均等法を平気で破っている企業もありますから。 強制雇用もいいのかもね。