恋人との婚約が、一方的に破棄されたことで、酷い鬱病になり自殺未遂と精神病院に入院となりました。 現在も、酷い鬱で仕事すらできない状態です。
この様な場合、相手を傷害罪として訴えることはできますか?
結論から言えば,お気の毒ですが,前の回答者の方がおっしゃるとおり,傷害罪で告訴することは困難だと思います。
犯罪は,その行為が客観的に刑法の規定(「構成要件」といいます)に該当し,しかも行為者に犯罪を犯す意思(「故意」といいます)がなくては原則として成立しません(刑法38条)。
傷害罪(刑法204条)の「傷害」とは,「他人の心身の生理的機能に障害を与えること」をいいます。先の回答者が言われるように,嫌がらせ電話により精神衰弱に陥らせたのが傷害行為に当たるとされた裁判例もあります。その他に裁判で傷害行為とされたのは,被害者宅への執拗な怒号,ラジオ・目覚まし時計を大音量で長時間鳴らしてストレスを与えたことなどがあります。「婚約の一方的破棄」は社会通念から見て,客観的に必ず「他人の心身の生理的機能に障害を与える」行為とは必ずしもいえないでしょう(:実際に破棄された個々人がどう感じるかはまた別問題です)。
仮に客観的に傷害行為といえるとしても,相手方は,質問者様を精神病することを目的として婚約を破棄したわけではないでしょうから,傷害罪の「故意」はないとされるでしょう。
また,このような事案は,(失礼ですが)世間に百も二百もある話であり,警察に訴えたところで相手にされないと思います。
傷ついた心中はお察しいたしますが,相手方をどうしても法的に裁きたいのであれば,刑事責任追及ではなく,民事の問題(民法の不法行為)として追及されたほうがよいのではないでしょうか。
【刑法】
(故意)
第38条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
【民法】
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。