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電柱傾き、家が損壊 補償はどうなるの?
「東日本大震災で自宅の敷地内にある電柱が激しく揺れ、家や塀の一部が壊れました。電柱を所有するNTT東日本と損害賠償の交渉をしていますが、修理費用の一部しか賠償されていません。こうした損害について全額を賠償してもらえないのでしょうか」=千葉県浦安市、会社役員、渡部恒弘さん(66)
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■「火事になってしまう」 実際にどのような被害だったのか、渡部さんに詳しく様子を聞いてみた。 3月11日の震災当日、敷地内に建てられていた電柱が道路側の塀と家の間で大きく揺れた。電柱は、塀と家の屋根にぶつかり、火花を散らしていた。 余震が続き、渡部さんの妻(61)は「火事になったら周囲に燃え広がってしまう」と不安に駆られた。路上に出ていた近所の人たちも集まり「キャー」「これは危ない」と騒然となったという。 電柱は屋根にもたれかかるようにして止まった。幸い火事には至らなかったが、塀は道路側に傾いて壊れ、屋根の一部も損壊した。付近では液状化現象が起き、あちこちで電柱が傾いていた。 建設会社に修理の見積もりを頼んだところ、費用は屋根が21万2千円、塀は126万円だった。渡部さんは全額を賠償してもらえると考え、4月に電柱を所有するNTT東日本に見積書を送付したという。 「これは高いですね」 渡部さんによると、同社の現場担当者はこう漏らした。担当者はいったんは「弊社が使っている業者に(修理を)やらせてほしい」と提案したが、同社側はその後「会社で震災による損害は一切弁償しないと決まっている」「見舞金10万円でどうか」など対応を変遷させたという。 電柱は5月中旬ごろにようやく撤去され、道路に仮の電柱が建てられた。しかし、それまでは余震のたびに屋根と電柱が「ギシギシ」ときしむ日々。渡部さんは話し合いが進展しないため、7月、自費で屋根と塀の修理を行った。 8月中旬になって、同社から渡部さんの口座に21万2千円が振り込まれた。同社側は「電柱を元の位置へ再建することを承諾してもらえれば、塀の修理費用についても対応する」と打診してきているという。 渡部さんには電柱の敷地料として3年間で4500円が支払われている。「ちゃんと補償してもらえないなら割に合わない。次に被害があったときに全額を賠償すると約束してくれない限り、敷地内での建設は認めない」という。 ■「賠償責任ない」「不可抗力」 NTT東日本に問い合わせたところ、震災にともなう、同様の損害への賠償を求める声は複数寄せられているという。 同社によると、震災では6万5千本の電柱が津波により流失したと推計され、5千本が液状化現象や地盤沈下により傾いた。浦安市の被害は約300本にのぼる。 「電柱の設置、保存のやり方に問題があった場合には賠償させてもらうが、法令に基づき適切に設置、保存をしているので、地震のみで倒れた場合には賠償責任はない」 広報担当者はこう説明する。では、なぜ渡部さんに修理費用の一部が支払われたのか? 同社は「個別の件については個人情報の関係で申し上げられない」と歯切れが悪い。 同じように電柱を所有する東京電力では震災で1万4千本(8月末時点)に被害があった。倒壊などによる家屋被害については把握していないが、「設置状況、維持管理に問題がなければ損害賠償は行わない」(広報担当者)と、NTT東日本と同じ対応だ。 平成7年の阪神大震災でも多数の電柱が被害を受けたが、関西電力は「当社に落ち度がなければ賠償責任はない」、NTT西日本は「震災は不可抗力ということで賠償責任はない」というスタンスで、両社とも賠償した記録はないという。 渡部さん方周辺では電柱が住民の敷地内に建設されているケースが多い。 敷地内にNTT東日本の電柱がある近所の女性(53)は「震災後、現場担当者には『何かあったら賠償する』と説明された。もし賠償されないなら、電柱を敷地の外に出すよう求めていく」と語る。 渡部さんも「想定外とされた原発事故で賠償が行われるのだから、電柱被害にも対応してほしい」と訴える。設置会社には住民らに対して、賠償の方針について明確に説明していくことが求められる。(高久清史)