特にプルペンキャッチャーやピッチング練習の際に投手の練習を手助けするキャッチャーのことを、あまりいいニュアンスではありませんが、壁と呼ぶことがあります。
昔、あちこちに原っぱや空き地があって、子供たちが草野球に夢中になっていたころ、ピッチャーの練習を一人でやりたい少年はコンクリートなどの「壁」が前にある空き地を探して、その壁に向かって、投球練習をしました。壁にはチョークで四角い枠を書いて、そこをストライクゾーンに見立てて投げるのです。コンクリートなので、投げた球は跳ね返って手元に戻ってきます。それでまた壁に向かって投げるのを繰り返して練習しました。
そんな体験が共有されているジェネレーションの人たちが、プルペンキャッチャーのことを「壁」と呼ぶようになりました。球を投げたら手元に返ってくるところが、子供のころの「壁」といっしょだからです。
でも、生身の人間であるキャッチャーを無機物のように「壁」と呼ぶのは失礼な話で、ブルペンキャッチャーでも捕り方を工夫して、ピッチャーの調子が悪くても、パァーンといい音を立てて捕球し、ピッチャーを乗せていこうとしたり、逆にピッチャーが天狗になっていたら、わざとボソっと景気のよくない音で受けてみたり、ピッチャーが投げやすいように、大きく構えたり、逆に小さく構えてコントロールに注意を促したり・・・、物理的に球を跳ね返すだけの壁とは大違いで、知恵を絞って、工夫してピッチャーをサポートしているのです。だから、キャッチャーのことを壁と呼ぶのはあまりお勧めできません。