当該セオリーに欠陥があるといち早く気づいた場合、あるいは状況変化により想定条件に食い違いが発生した場合、セオリー無視は十分とりうる選択肢です。
前者の例では、将棋の戦法があります。ここ二十年ばかりの戦法の変化、流行の推移、新手の発見は瞠目すべき点があります。
後者の例では、日航機123便の御巣鷹山墜落事故後の収容遺体の遺族への引き渡し処理上の事務手続きがあげられます。現場の大変さを理解できなかった警察上層部は杓子定規なルール、手順の順守にこだわり、現場は検屍にあたった医師らとともに現実的かつ遺族の負担を緩和できる線まで譲歩を求めます。近年の例だと、小惑星探査機はやぶさの設計書を無視し、異常時に備えてさらに作り込みを施した現場の技術者がいます。W杯直前にシステムを変更した第二次岡田JAPANがいます。直近だと、夏の甲子園全国野球大会、帝京高校対近江商業戦の近江商業の九回表逆転ホームラン、九回裏の逃げ切り劇があります。
点差と相手投手のできから、九回表、近江商業の監督は投手の打席に代打を送り思い出出場の温情采配モード。セカンド、レフトにも代打を送ります。ところが代打陣が初球から打ちにいった。あれよあれよという間に一点返したあと劇的な本塁打も出た。ところが九回裏の守備が残っています。ピッチャーに代打を出したために地区予選でも登板経験がない投手に託すしかなかった。ふつうの心臓なら緊張でがちがちになるところです。結果は交代したセカンド、レフトに打球は飛びましたが確実にアウトにとり追加点を許さず勝利しました。緊張の場面、萎縮したり力みすぎても仕方ないところを、仲間を信頼してのびのびと精一杯できる限りのことを悔いなくやるという淡々とした頼もしさと清々しさがありました。監督がセオリー無視というか勝負を九回表はじめから捨てて、交代選手にまかせたぶん、のびのびできた感があります。
お礼
ありがとうございました。 面白いお話を詰め込んでいただいてうれしいです。