補足の質問へのお答えです。
基本的には、寄付に対する意識の違いではないでしょうか。
もともと、イギリスからの難民が住みついたアメリカには、政府に頼らないという気風があります。
たとえば、定住した開拓民は、自分たちでお金を集めて学校や教会、警察、病院などを作りました。現在でも、美術館、博物館、大学、病院、図書館などの公共施設の多くは民間の非営利団体(NPO)が所有し、運営しています。また地方検事や保安官なども選挙で選びます。
こうした公共施設を維持するために必要な資金は、もちろん税金による補助金もありますが、かなりの部分は財団や個人の寄付でまかなわれます。その寄付には、税金の払い戻しがあるので、実質的に税金を納めるか、寄付をするか納税者が自分で決めることになります。
寄付は陰徳ではなく、新聞などでも大きく報道されます。個人や企業の社会的評価が、何にどれだけ寄付したかで決まる面もあります。また個人主義のお国柄ですから、親の遺産をあてにしない気風が強く、遺産をガン研究や母校に寄付するという例はごく普通です。
日本の場合、江戸時代、6公4民といわれるように、お上が民の余剰をほとんど吸い上げる仕組みがありました。明治に入っても、何が必要かは政府が決め、税金でその費用をまかなうという考え方が守られてきました。
もちろん、民間の団体が公益的な事業を行うことも認められていました。私立学校や民間病院などはその例です。一番いい例は財団法人、社団法人です。しかし、これらの団体は政府によって認可され、活動内容は政府が監督指導することになったいました。
日本相撲協会がその例です。いろいろ問題があったのは別として、なぜ文部科学省が監督指導するのかといえば、協会が文部科学省認可の財団法人だったからです。
話がそれましたが、助成財団にたいする企業や個人の寄付も、基本的にはまず税金を納め、残った分を寄付にあててよいというものでした。アメリカのように、寄付をすれば相続税を納めなくてもいいという仕組みと大きく異なります。
ようやく最近になって、民間による公益的な事業への税制上の優遇措置が認められるようになりました。まず、財団・社団法人がなくなり、公益財団・社団法人制度が生まれました。また菅内閣退陣の最終段階に、与野党の全会一致でNPO法の改正が成立し、NPO法人に対する寄付が免税になりました。
これでアメリカの助成財団に追いつくかといえば、それは見込み薄です。さきに示したアメリカの助成財団の第1位はマイクロソフトの創設者ビル・ゲイツの財団です。儲けてパッと使うのが日本の成功者の見栄だとすれば、アメリカでは公益的な事業を始めて尊敬を得るのが念願のようです。
なお、寄付税制は細かく説明するとくどくなるので、ごく大まかに書きました。公益法人や寄付税制で検索すると、より詳しい説明が得られます。
お礼
ご丁寧な補足への回答、有難う御座いました。よく判りました。日本は文化的な後進国なのですね。