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自由心証主義についての疑問とは?
- 日本の裁判における自由心証主義について、異なる裁判官が違った結論を導くことに疑問を感じています。
- 同じような境遇で親が子供を殺す事件でも、執行猶予や実刑などの判決がまちまちであり、基準の統一性に疑問を抱いています。
- 裁判官によって同じ事例でも全く違った判断が下されることは問題であり、より公平な基準の設定が求められると考えています。
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質問者が選んだベストアンサー
まず、質問における問題提起の視点は鋭いところ突いているな、と思いました。 まず1つ用語法について誤解を解いておきます。 (質問者様だけでなく、他にも誤解している人が多いと思われますし) 法律用語でいう自由心証主義というのは 事実認定をするときに証拠の評価を裁判官の裁量に任せることを指します(刑事訴訟法318条)。 自由心証主義の対語は『法定証拠主義』ですが、法定『証拠』主義という表現からもわかるとおり、 証拠の評価方法を指す言葉(およびそこから導かれる事実認定)なのですね。 今回はこの話ではなく、量刑(あるいは刑の量定)の話ですよね。 これも処断刑の範囲内という制約があるにせよ、裁判官の裁量に任されていることに違いはないです。 (この根拠はどちらかといえば憲法76条3項ですね) で、1つはっきり言えるのは(そして私自身何度となく繰り返していることですが)、 『マスコミは間違いなく裁判の情報を正確には伝えていない。 どんなニュースも評価に必要な情報を全部は伝えていないが、 ことに裁判に関しては1割程度しか伝えていないと理解したほうがいい』 ということです。そして、 『判決を評価したいのであれば、必ず判決文に直接当たれ』 と。 この事件だって例外じゃないです。 報道に書かれていることに嘘はないかもしれないけど、 報道に出ていることだけが量刑に影響したとは限りません。 これは他の事件も同様です。 なので、 >裁判官によって、同じような事柄を全く正反対にとらえられちゃうんじゃ、 >たまったものじゃないと思いませんか。 同じような事柄を全く正反対に評価されたらたまったものじゃありませんが、その前に 「本当に『同じような事柄』と評価していいのか?」 という考察が必要ですし、それは報道記事やニュースからだけでは絶対に判断できません。 もちろん、そこまで評価しても違う量刑になることはあります。 裁判官だって人間なので、100%の評価にはなり得ないです。 いちおうそれを救う制度として上訴(あるいは三審制)があるわけですけど、 それとて100%完璧かと言えばそうとは言えないかもしれない… >もうちょっときちんとした基準を決めた方がよくないですか。 それは1つの主張としてあり得ます。 上に書いた『処断刑の範囲内という制約』がそれに当たり、 法律上の刑をもっと細分化して制定すれば、いやでも裁判官はそれに制約されますからね。 (憲法76条3項でも「憲法と法律」には拘束されることが明記されています) 日本の刑法は先進国の中では法定刑を広く設定してほうなのも確かです。 (そんなにたくさんの国の刑法は調べていませんけどね) だけど細かければ今度はそれだけわかりにくくなるという問題もあるんです。 罪刑法定主義というのは「あらかじめ罪になる行為とそれに対する刑を法律で定めておく」ことですが、この最大の目的は「あらかじめ罪になる行為を国民に知らしめておく」ことなんですね。 量刑はさまざまな事情を勘案して決めていますが、 その「さまざまな事情」はそれこそ事件の数だけあるといっても過言でないくらいさまざまでしょう。 ある程度の定型化はできるでしょうけど、それを全部条文に書きだしたら… 今でさえ250条以上ある刑法、隅から隅まで読んだ人なんて法律を勉強した人か法曹関係者しかいないんじゃないですか?これが何倍にも膨れ上がることが本当に国民にとって利益になるかどうかは、議論の対象になると思います。 そういう意味では、現在の刑の量定のやり方もそれなりに利点があるんですね。 (たぶん、量刑で裁判官の裁量を全く認めていない国は皆無だと思います) こういう問題で大切なのは「現在の制度への批判」は大いに結構なことなんですが、 「現在の制度になっているのにもそれなりにメリットがあるからだ」という点に目をつむってしまうと 主張自体の説得力を一気に失ってしまうってことなんですね。 ことに刑事制度は国によっても様々制度が異なることが示すように 「このやり方なら完璧。このやり方にいいことなんて1つもない」というものではなく、 どの方法も一長一短あり、批判対象(現行制度)の「長」と自分の主張の「短」を意識しつつ いかに長所が短所を凌駕するものであるかを説明(説得)できるか、が大切です。
お礼
大変詳しい解説をありがとうございます。 とても勉強になりました。