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堤防の鉄柵なぜ開放しない?
「大震災当日に徒歩で帰宅する際、(東京と神奈川の都県境の)多摩川の橋に向かう道に鉄柵が設置されており、3人以上通れる幅の道なのに真ん中の1人分しか通れませんでした。パニックにはならなかったので譲り合って通っていましたが、あの柵は取り除けたと思います。将来災害があった場合に不安を感じます」=横浜市の匿名
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■非常時の開放は想定せず 3月11日の東日本大震災で、首都圏の交通機関はマヒした。JR東日本や私鉄は運休し、道路では車の大渋滞が発生。同日深夜には一部私鉄が運転を再開したものの、東京都によると約9万4000人が自宅に戻れない帰宅困難者となった。 一方、徒歩で帰宅することを決心し、ヘルメットをかぶって自宅を目指すサラリーマンらが街中にあふれた。中には、河川の堤防沿いの道路を歩いて橋などに向かう姿も多く見られた。しかし、車やバイクの進入防止のために設置された場所もあり、大勢が一度に進むことはできないという現象もあったようだ。 関東地方整備局河川管理課によると、鉄柵は不法投棄を防ぐため、車などが入れないように河川沿いの堤防上の道路などに設置されている。震災時などに取り外せば、一度に大勢が堤防の上を通行できるようになるが、同課は「鉄柵を取り外すことは想定していない」という。 その理由について、同課の担当者は「地震などの場合、津波が襲ってきたり、堤防が破損したりしている恐れもあり、非常に危険になっている可能性がある」と説明する。 実際に、今回の地震では同整備局が管理する利根川などの一部で堤防が破損する被害が出た。同課は「震災後、堤防の点検などの対応を行うが、安全がすぐに確認できるとはかぎらない。震災の際には可能な限り河川に近づかないでほしい」と強調している。 ■帰宅せず会社などにとどまることが重要 大震災直後の帰宅困難者問題について、東大の廣井悠助教(都市防災)は、地震発生時に首都圏にいた2026人を対象にアンケートを実施した。その結果、「自宅に帰った」のは80・1%。一方、「帰らずに会社に泊まった」が11・6%、「会社以外の場所に泊まった」が6・3%だった。「途中で帰宅をあきらめた」のはわずか2%にとどまった。 このうち、帰宅を試みた1663人を対象に帰宅時に不便だったことを質問。「携帯電話の不通」が31・2%、「身体が冷えた」が12・8%。一方で、「特にない」は41・6%だった。また、今回帰宅できた人の8割以上が今後も震災時には「自宅に帰ると思う」と回答している。 だが、廣井助教は「今回の震災で首都圏の被害はそれほど大きくなかった。今回帰れたからといって、次も帰れるとは思わない方がいい」と指摘した上で、「首都直下型の地震が発生した場合、無理に帰ろうとするのは逆に危険だ」と警鐘を鳴らしている。 東京都の試算によると、東京湾北部を震源とするマグニチュード(M)7・3の首都直下型地震が平日午後6時ごろに発生した場合、約6400人が死亡、約16万人がけが。447万人が帰宅困難者になると推計している。 首都圏各地でビルの倒壊や大規模な火災が発生。停電も起こり信号が停止して大きな混乱が生じると考えられる。この場合、行政の対応は火災や救助に重点が置かれ、帰宅困難者への対応は後回しになる。情報のない中ですぐに帰宅しようとすれば、火災や余震による倒壊に巻き込まれてしまう可能性もある。東京都の担当者は「震災が起きた直後は、都がすべて面倒を見ることはできない。帰宅困難者には少しがまんしていただくことになるだろう」としている。 廣井助教は今回の地震では携帯電話などが使えず、災害伝言ダイヤルの認知度も低かったため、家族のことが心配で帰宅しようとした人が多かったと指摘。「事前に避難場所など非常時の行動を確認しておくことが重要だ」としている。その上で、「心配する気持ちは分かるが、状況がはっきりするまで安全な場所にとどまるべきだ。会社や緊急の避難施設なども安心してとどまれるように、食料や毛布などの備蓄を充実させる必要がある」としている。 いつ発生するか分からない首都直下型の地震。今回の経験を教訓として、被害を少しでも拡大させないよう、一人一人の事前の準備や心構えが必要になってくるだろう。(大島悠亮) ◇ 「社会部オンデマンド」の窓口は、MSN相談箱(http://questionbox.jp.msn.com/)内に設けられた「産経新聞『社会部オンデマンド』」▽社会部Eメール news@sankei.co.jp▽社会部FAX 03・3275・8750。