#2 です。お礼拝見しました。
色んな意見が出ていて,薬学部に6年おられた「専門家」の方も回答されている後に再回答もお恥ずかしいですが,皆さんの回答を拝見して私も少し補足いたします。あ,私,薬学部を博士課程まで済ませ,その後現在まで大学の研究所で天然物化学(未知植物の活性測定,成分同定,誘導体合成,・・・)の研究を行なっています。「天然物化学分野」ではそれなりに経験年数はありますが,植物の開発経験はありませんので「一般人」です。
まず,先にも書きましたが,一番重要なのはあなたが考えている『薬の原料となる植物(つまりは薬草)を開発するような研究』ってどういったものでしょうか? それをもう少し具体的にお書きいただければ,チョット違った観点からの回答も可能かもしれません。
『薬』に重点を置くのであれば薬学部か医学部でしょう。が,医学部では薬草に関する事は薬の一種として出てくるだけでしょうから,開発をお考えなら薬学部となります。特に『薬の原料となる植物(つまりは薬草)』と言えば,薬学部の生薬学関係の研究室が該当します。薬学部は全国に薬50大学ありますが,各大学に最低1つ(多ければ3つ以上)の生薬学関連講座(生薬学,薬用植物学,薬用資源学など)と薬草園又は薬用植物園があります(これは必ず薬学部に作らなければいけない講座です)。一方,『植物を開発するような研究』であれば,農学部が対象になるでしょうか。あるいは,工業的な手法の開発に重点をおくなら,工学部の生命工学科等でしょうか。
ここで,薬学部では「薬の開発」はできないという回答がありますが,何人かの方が補足されているように「薬の開発」は独りのあるいは1グループの小規模な組織でできるものではありません。通常企業は,大学の成果に目を光らせ,利用できるものは共同研究等の形で取り込もうとします。また,大学側も自分達だけで最後までもっていけないのは良く分かってますから,ある程度見込が出てきた所で企業との共同研究を視野に入れます。その各段階,内容に応じて,薬学,農学,工学,理学,医学・・・の知識や技術が必要になります。したがって,企業はそれぞれ必要な人材を適した学部から探します。
この意味では,学部は生命科学に関する学部・学科なら何処でも良いという事になってしまいます。さらには,「植物」に重点をおくなら農学部系の学部になります。
が,繰り返しになりますが,『薬』に重点を置くなら薬学部以外にはありえません。たとえ直接開発していなくても,今必要な『薬』は何か,その『薬』はどんな特徴を持った化合物か,必要な特徴を『薬』に持たせるにはどうすれば良いか,安定にするには,安全にするには,・・・と『薬』の事を学べるのは薬学部だけですから。
さて,薬学部で『薬草の開発』は行われていないとの回答もありますが,開発をどう捉えるかで変わってきます。薬学部の生薬学関連研究室を研究分野で分類すると大きく4つに分ける事ができます。1つは「生合成」を専門にする研究室,2つめは「天然物化学」を専門にする研究室,3つ目が「生薬薬理」を専門にする研究室,そして「昔からの生薬学」(生薬の分類・同定など)を専門にする研究室です。もちろん,1つの研究室で複数の研究を行なっている所は多数ありますが,メインの研究分野で分ければこうなります。
お書きの『薬草の開発』を「品種改良や遺伝子組換えなどを行なって新植物を作り出す事」と捉えると,最初の「生合成」を専門にする研究室が該当します。「生合成」というのは,植物中の成分が生成される過程を明らかにする研究ですが,その目的の一つはその過程を利用して有用成分を効率的に精算する植物等を作り出すことにあります。残念ながら,明らかになっている事はマダマダ少ないですので,多くの事が研究途上ですが。
『薬草の開発』を「新たな資源植物を見出す事」と捉えると,色んな国へ調査に行って,そこの薬用植物などを収集し,それらの活性測定・成分同定などを行なう研究が該当します。これであれば,上記の「天然物化学」や「昔からの生薬学」を専門にする研究室が該当します。この様な事は企業では行なっていません。大学の先生が調査・収集した資料を分与していただいて(買い取って),自社のアッセイ系でスクリーニングにかけるのが通常です。
また,『薬草の開発』を「従来の民間薬などをキチンとした「薬」にする事」と捉えると,それらの薬効や作用機構を明らかにする必要がありますが,これは「生薬薬理」を専門にする研究室が行なっている研究です。
あるいは,薬用植物の利用に関する事は「病院薬剤部」等で研究が行われている事もあります。
最後に,病院実習の事をチョットだけ触れておきますが,薬学部6年制との関係もあって,病院実習・薬局実習はどの大学でも必修になっていると思います。未だなっていない大学がもし有っても,あなたが実習する頃には必修になると思います。
お礼
再度ご回答いただき、ありがとうございます。 まず、私がしてみたい研究のことですが。 例えば、『モルヒネ』は『ケシ』の実から取れますよね?(実際は、『アヘン』から精製したものが『モルヒネ』のようですが…) 私は、その『ケシ』の段階のものが作ってみたいのです。 と、これでわかるでしょうか…? 私がしようとしていることは、薬学部でもできるかもしれない、ということになるのでしょうか? それなら、話は簡単ですが… 専門的な意見が多くて、なかなか整理できていない状態です… しかし、こんなに詳しく回答してくださり、大変感謝しています。 何とか、自分の進路がわかってきそうです。