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源次郎尾根第一峰のルートについて
- 源次郎尾根第一峰のルートについて懇切丁寧に教えていただくことができました。昨年、同僚と一緒に登った尾根は難儀していたので、別のルートを試みたいと思っています。
- 私は40年以上山登りから遠ざかっており、体力が低下しているため、エスケープルートや登山の難易度についてアドバイスをいただきたいです。
- 別の尾根から北方稜線経由の仙人池や長次郎雪渓経由の北方稜線も歩きましたが、源次郎尾根第一峰のルートについて詳しく知りたいです。
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学生時代は夏山合宿で毎年20程度は剱岳に入っていたのですが、それももう20年以上、30年近くも前の話なので、どこまで最近の事情に通じているのかは判りませんが・・・ 源治郎尾根の"一般ルート"(というのもおかしな表現ですが)では、技術的に難渋するところはありません。2峰からの懸垂下降さえなければ、カニの縦バイや横バイがある一般ルートよりよほど易しいです。標高差も剱沢からだと一般ルートと大差ない(起点は源治郎尾根の方が若干低いですが)し、体力的にも一般ルートの登下降ができる人ならまず問題ありません。 とはいうものの、ルートファインディングはやはりバリエーションルートですから一般ルートのようなわけにはいきませんし、一般ルートと同じ気分で入ると痛い目に遭いかねませんがね。 北方稜線を歩ききっている方なら、源治郎はまず問題ないと思います。単独でというのはあまりお勧めはしませんが、それも本人の判断次第でしょう。 質問者さんが双眼鏡で見た「1峰の登りで難儀し」というのは、おそらくルートファインディングのミスだったのではないかと。 昔は尾根に出れば間違えようがないほど明瞭な踏み跡があったんですけどね。今はバリエーションルートをやる人口が減っていますから踏み跡が薄くなっているのでしょうか・・・ 一昨年、別山の頂上から八ツ峰6峰フェースを双眼鏡で観察したとき、8月初旬の絶好のコンディションだったのにも拘わらず、A~Dの4つのフェース全体で2組しか登攀中のパーティーがおらず、愕然としました。25年前は「今日はAフェースは混んでて順番待ちがうざいからDフェースに行こう」なんて感じだったのに。 バリエーションルートを登る、ということを理解しているという前提で話します。 エスケープルートですが、一般的に源治郎尾根から長治郎雪渓側にはルートはないですね。北面なので岩がもろく、地形的にも厳しいですから。 エスケープするとすれば平蔵谷側へ、ということになりますが、1-2のコルからは下降できません。 2峰コル(懸垂下降で降りた地点)からは平蔵谷側に下降することはできます。平蔵谷やS字雪渓の雪渓の状態に依りますが、2峰コルから平蔵谷に直接下降するルート、S字雪渓との出合いまで尾根を下降してS字雪渓上部または平蔵谷に降りるルートがあります。どのルートを選択するかはそのときの雪渓の状態次第でしょう。 いずれにしろ、よほど雪渓の状態が良いときでないと、尾根から雪渓に移るときがけっこうシビアです。釈迦に説法だと思いますが、雪渓から尾根に取り付くときよりも、尾根から雪渓に降りるときの方がルートファインディングが圧倒的に難しいので、雪渓処理にそれなりの経験を積んでいないと「エスケープ」にならない時が多々あると思います。 1-3のコルからは2峰フェースの基部つまり平蔵谷側を巻く踏み跡があるはずです。少なくとも25年前はかなり明瞭な踏み跡がありました。 ただしこれも、かなり不安定な草付き帯や急傾斜のブッシュ帯のトラバースを含みます。2峰コルまで、滑落すれば万に一つも助からない場所の連続です。懸垂下降なしで2峰コルに辿り着けるのは大きなメリットですが、尾根上をルート通りに通過する方が技術的にも易しいですし気分的にも圧倒的に楽です。何か事情がない限り、この巻き道を選択する理由はないと思います。 というわけでまとめますと、 1.源治郎尾根からのエスケープは2峰コルからのみ平蔵谷に下降することで可能 2.1-2峰コルから2峰コルに巻き道を辿ることで懸垂下降を省略可能 ということです。 技術的にはルート通り本峰頂上まで源治郎尾根を辿るのが最も易しいです。雪渓処理とルートファインディングのレベルによってはエスケープが「エスケープ」にならないこともあり得る、とも言えます。 もし実際に行かれるときは、必ず剱沢小屋や剱沢キャンプ場に詰めている山岳警備隊から、上で書いたことの現状の確認をしておいてください。 エスケープルートは全て剱沢から双眼鏡等で目視可能なので、ある程度は剱沢から観察して見当を付けることはできると思いますが、絶対に小屋あるいは警備隊から聞いておいた方が良いです。彼らの情報が最も確実です。
お礼
懇切丁寧に教えていただきありがとうございました。1峰のぼりは双眼鏡で見たよりは難しくないのかもしれないとは思っていました。私が見た2人組はルーファイのミスですね。源次郎尾根は結構今でも登る人が多いようで2峰懸垂下降で順番待ちがあるようです。昨年「山と渓谷」がバリエーションルートとして紹介したことや、一昨年は「点の記」が上映された影響かもしれませんね。長次郎雪渓にエスケープするのは無しですね。佐伯さんの著作の中で、「長次郎雪渓の上部がクレバス、シュルンドで困難なときは源次郎尾根にトラバースする」ような記述があったものですから。でも上りは容易ですが下りは困難ですね。たしかにかにのたてばい横ばいは、鎖が無ければとても行けないルートだとは考えていました。 この夏は仲間を募りぜひ登らせていただきたいものだと考えています。 どのような縁か不思議なことに、来週はあの「点の記」のモデルになった柴崎芳太郎氏でしたか?の故郷大石田に仕事で参ります。積雪2mだそうです。 重ねてありがとうございました。