浅田選手の今季第一戦であるフランス大会で、浅田選手は2位の順位は確保し、ファイナルに向けて大きく前進することができましたが、予期せぬ乱調により、点数的には金妍児選手に惨敗してしまいました。
浅田選手も含め、他の選手に比べ、一見、金妍児選手の得点があまりにも高得点なため、多くの人が、ジャッジの采配に疑問を抱きたくなる気持ちは分らないでもありませんが、シーズン初めの一度の大会の成績だけで、単なる憶測に基く論議や結論はまだ早いかもしれません。
惨敗の原因をジャッジの采配に負わせれば、自身の気休めにはなるかも知れませんが、自己反省と更なる研鑽の意欲を鈍らせ、同じ失敗を繰り返すことになりかねません。
今回は慎重になりすぎたのか、浅田選手はジャンプに失敗し、その影響か、全体的にスピードに欠け、演技が小さくなっていたように見えました。 新ジャッジング・システムにより、かなり客観的に採点するようになったとは言え、競技得点の半分を占めるプログラム構成点(TES)は主観的要素が強いので、ジャッジの主観に大きく影響されます。
一般に、シーズン初めの試合では、新しいプログラムに十分慣れていないため、得点が低くなりがちで、シーズンが進むにつれて徐々に得点が上がっていく選手が多いです。 近年、浅田選手もそう言う傾向があるようです。 一方、近年、金妍児選手の得点はシーズン初めから、年間を通して安定しているようです。
得点を気にする前に、先ずは、ジャンプを含め、浅田選手自身が確信を持てる演技をすることが一番ではないかと思います。
得点について
フランス大会での得点のみを比較すれば、金妍児選手と浅田真央選手の得点には大差がありますが、金妍児選手は絶好調で浅田真央選手は絶不調だったことを考慮する必要があります。
下に今春行われた国別対抗戦での浅田真央選手の得点を掲げました。浅田真央選手が好調であればこのような得点を出せるのです。
この得点と比較するならば、今回の金妍児選手の得点は浅田真央選手にとって決して手の届かない得点ではないのです。
フランス大会(2009年10月)
SP:
金 妍児選手 TSS=76.08 TES=43.80 PCS=32.28
浅田真央選手 TSS=58.96 TES=29.80 PCS=29.16
FS
金 妍児選手 TSS=133.95 TES=67.55 PCS=66.40
浅田真央選手 TSS=115.03 TES=55.07 PCS=60.96 減点=1
国別対抗戦(2009年4月)
SP 浅田真央選手 TSS=75.84 TES=44.40 PCS=31.44
FS 浅田真央選手 TSS=126.03 TES=62.11 PCS=63.92
TSS: 競技得点
TES: 総要素点(技術要素点)
PCS: 総構成店(プログラム構成点)
日本のフィギュア・スケート連盟は、伊藤みどり選手一人だけに過大な期待を負わせ結果、1992年のアルベールビル・オリンピックで惜しくも銀メダルに終わったことの反省に基いて、常に複数の選手で期待を分担できるように複数の有力選手を育成してきたといわれます。
けれども、最近の傾向を見ていると、我々ファンも含めて、日本オリンピック委員会、フィギュア・スケート連盟及びマスコミは、複数の有力選手が居るにも拘らず、あまりにも浅田真央選手一人だけに期待をかけすぎているように見えます。 このような過大な期待が或は、浅田真央選手への大きなプレッシャーになって、彼女の昔のあの、のびのびとした演技を奪っているのかもしれません。 浅田選手には技術も演技力もすでに充分あり、現在、欠ているのはメンタル面だけだと思います。
周囲の過大な期待、演技直前のタラソワ・コーチの怖い顔の駄目押し、先ずはこれを止めることだと思います。もっと浅田選手を信頼して、タラソワ・コーチが「貴方は出来ます、自信を持って、練習どおりのびのびやりなさい」とにっこり笑って送り出すことが一番の解決法だと思います。
お礼
丁寧なご回答ありがとうございます。 のびのびと演技してほしいですね。でも、これほど有名になってしまった真央ちゃんには難しいのでしょうね。 エキシビジョンのプログラムの演技はものすごく晴れやかだし、プレッシャーから開放されている様子がうかがえます。 ロシア杯、真央ちゃんの晴れやかな演技が見られることを楽しみにしています。