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危険負担における債権者主義の根拠論

危険負担に関してご教授ください。 危険負担おける債権者主義の根拠論として、よくあげられるのが「所有の移転と共に危険も移転する」というものです。我妻博士は、これを基礎として「利益の存するところに危険あり」とのローマ法以来の原則が成り立っているとします。 ということは、所有権が移転しない段階では危険負担は原則どおり債務者主義であるということで、このことは534条2項が不特定物は特定したときから1項の規定を準用するとしていることから明らかだと思います(不特定物は「特定」すれば所有権が移転するというのが通説・判例です)。 ならば、たとえば特定物債権であったとしても、契約成立時に「所有権は代金の支払いと共に移転する」との特約を結んでいて、代金支払いのないときに債務者無責の履行不能が生じたならば、やはり534条1項の債権者主義ではなく、原則どおり536条1項の債務者主義になるのではないでしょうか?? ご教授お願いします。

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回答No.2

 このような基本的問題について議論が尽きない(大学者をしてもすっきりとした説明が難しい)のは,法が理論によって構築されているのではなく,実践の中から産まれてきたものであることの一端を示しているといえると思います。成文法といえども,まず法理論があって,それに従って理論的に条文が構成されてきたのではなく,現実に妥当している法があって,それを基に法理論が構築され,そこからさらに演繹的に種々の法制度が作られていったというのが,多分古代法の現実なのではないかと思います。  それはともかく,もう私にとっては昔の問題なので,詳しいことは忘れましたが,覚えている範囲で・・・  危険負担の問題を考える上では,「特定物の給付義務は,現実に存在するその物を給付すれば足り,それに尽きている」という考え方もあります。これがどこから来ているか忘れましたが,この考え方に基づけば,特定物の給付について危険負担の債権者主義は容易に説明ができます。すなわち,債務者は,特定物が破損した場合現状有姿の目的物を給付すれば足り,滅失した場合には給付義務を免れるが,それは反対給付とは結びついていないので,反対給付を受ける権利を失わない,という説明になります。  この説明によれば,その物の引渡義務は,所有権の所在と無関係に,その物の滅失によって消滅しますので,債務者は反対給付を受ける権利を失わないことになります。  で,これと,「危険は所有権とともに移転する」という考え方がどうつながるかという問題が生じます。私としては,その点に対する答えを持ち合わせていないのですが,結局は,最初に述べたように,法理論の形成過程において,既にあった法制度から導かれたいくつかの理屈を,それぞれの場面にあうように(債権者・債務者の公正・平等や法的一貫性の見地から),適宜使い分けている,という程度のことではないかと思うのです。

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回答No.1

ご質問における債権者主義の根拠には、「危険は買主にあり」の法諺も含まれると思いますので、本来的には所有権の帰趨だけで定めたものではないとも、考え得ると思います。 また、契約時移転の原則を以って債権者主義を定めたでしょうから、例外を捉えて、いわゆる修正説を採るか、文理上も債務者主義と考えるか、を議論するのは、(本件ご質問が、研究上の疑問ではなく、試験勉強上の疑問だとすれば)建設的ではないと思います。(ご質問のような疑問が生じるからこそ、修正説がでてきた、と理解すれば足りると思います。)