大雑把に言っちゃうと、警察は治安維持および犯罪捜査が主な仕事。検察官は刑事訴訟手続全体を行うのが仕事。他にもあるけどとりあえず関係ないから除外。
だから、大きく分けると犯罪が起る前の治安維持、犯罪が起ってからの犯罪捜査は警察の仕事で、捜査とその後の公訴提起、公判、判決後の刑罰の執行指揮は検察官の仕事。
で、問題は、捜査の部分が両者で重なってるってことね。基本的には公訴提起から後が検察官の仕事なんだけど、捜査ってのは元々公訴提起を前提にした証拠収集活動なわけだ。とすると、公訴提起以後のことを知らない警察が捜査したって大事なところが抜けてることがあるのね。それを防ぐためには公判をよく知る検察官が捜査しないと困るわけ(ちなみに検察官でも司法試験に受かっていない副検事、特任検事は捜査はできても公判が苦手という人は多いらしい。赤カブ検事は司法試験に受かっていない特任検事だが公判得意そうだ)。つまり、公判でどんな証拠が必要か、どういう捜査をやったら公判で問題が起るか、そういういことを理解している検察官の方が適切な証拠収集ができるってことね。だからどんな事件でもほぼ必ず検察官は補充捜査をするよ。大概は、警察の調書の内容を確認して新たに調書を取り直す程度だけど(警察官の作成した調書と検察官の作成した調書では法律上の扱いが違うせいもある)。
そんなわけで基本的な犯罪捜査は警察、だけど非常に複雑な法律判断(あるいは証拠評価など)が必要になると検察官が出張るというのが現実なわけ。検察官が出張ると警察が引っ込まざるを得ないのは、検察官には 個 別 の 事 件 の 捜査について自ら捜査する場合に警察に対して補助させるための指揮ができるから(具体的指揮という。一般的指揮はあくまでも犯罪一般の取締りについて方向性を示すとかそういうためにするもので個別の事件とは関係ないから検察官が個別の事件で自ら中心となって捜査する場合の権限ではない)。そういう意味で事実上の役割分担はあるし、それを一応正当化する法的根拠もあるってわけだ。ちなみに言うこと聞かない警察官については公安委員会に処分しろと言える。
汚職事件で検察官がほとんど捜査しているということはないよ。検察官の数は何しろ少ない。特捜だって実際に強制捜査になると応援呼ばなきゃとても無理。だからなんでもかんでも捜査してられないから、初期段階から検察官が捜査するのは一定の重大事件だけ。地方議会レベルの汚職だと警察が捜査する(所轄じゃなくて本庁みたいだけど)のはよくある話。全国紙に載るようなでかい事件は検察官が出てくるだけ。
ちなみに、和歌山毒カレー事件の捜査は一般の殺人事件であるにもかかわらず検察官が指揮したんだけど、スタンドプレーって批判が一部にあるね。実際、状況証拠ばかりだったせいで立証が難しかったことを考えると、検察官の捜査指揮も止むを得ない面があるんじゃないかという気もするけど、実際のところは部外者には判らないね。まあ、検察官の捜査は警察から見るとでしゃばりとしか見えないみたいだけど。
警察がどう思っているかは別にしても、検察官は捜査するな、公訴提起以降だけをやれという公判専従論という意見もあるところ。
ところで書類送検って言うのは、警察(事件によっては他の機関。労働関係なら労基署とか海なら海保とか)が事件を捜査したら、その事件を検察官に送る義務があるって話。なぜ?ってそれは、公訴提起が検察官にしかできないから。事件を送らないと、その判断ができないでしょ?それを一般には書類送検って言うんだ。本当は書類じゃなくて事件を送ってるんだけどね。
元々、事件を検察官に送るのが原則だけど、身柄拘束した場合には、被疑者の身柄を検察官に送ることがあるのよ(送らないで釈放というのもある)。その場合、事件も一緒に送るの。そうすると改めて事件を送る必要がないから書類送検しないのね。本当はこっちはあくまで例外なんだけど、日本じゃ逮捕するのがデファクトスタンダードなもんだから、こっちを単純に送検と呼んでそれに対して事件を送る原則形態の方を書類だけで被疑者の身柄は送らないって意味で書類送検と呼んでるわけだ。でも本来の原則と例外がひっくり返ってるんだよね。なお、これは新聞用語ね。法律用語できちんと言うなら、(事件の)検察官(への)送致とかなんとか。
お礼
VVandE3E3さん、レス有難う御座います。 >基本的には公訴提起から後が検察官の仕事なんだけど、捜査ってのは元々公訴提起を前提にした証拠収集活動なわけだ。 両者の役割分担は分かったとして、そもそもなぜそのようにわけたのでしょうか。 警察が両方をやる、あるいは検察が両方をやるというのが合理的とかんがえるのですが。 警察が書類なり、身柄なりを送検をしない場合もあるのなら、公訴提起という部分を警察が何らかの予断をしていると 考えられるのでは。 組織的に一緒にしたらと思うのですが、もっと分けなければならないという司法上の明確な理由はあるのでしょうか。