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映画「市民ケーン」の評価はどこから?
今月号の(題名を忘れたのですが)雑誌で、ベスト洋画のランクがあり、一位は「市民ケーン」です。大昔にこの映画を見た覚えがありますが、感動もしなかったし、「すごい」とか「しんみりと良かった」というのも何にも無かった(私の感じ方です)。私にはわからないけど、オーソンウエルズの個人的魅力? でも、長期間、多くに人から評価を得るにはそれなりの何かがあると思いますが、一般的に何を持って、この映画は評価されているか、教えてください。お願いします。
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『市民ケーン』について、他の方が書かれているような解説をよく目にしますが、これは全くの間違いです。(事実の間違いというのではなく、なぜ、名作か、という点についてです。) 技術的な面ですごかったから名作だ、などということがあるわけがありません。映画は技術を見るのではなく、どれだけその映画に感銘を受けたか、によって評価されるべきだからです。 そして、最も多くの映画の批評家、映画監督など、私たちより断然、いろんな映画を見てきた人達が、どの映画よりも感銘を受けた、あるいは感動した映画が、市民ケーンだった、ということです。 考えてみて下さい。映画通の中の映画通は、人と違った映画に投票したくなるものです。毎回毎回、アンケートのたびに市民ケーンが一位になるとわかっていて、それでもなお、この映画に投票してしまう、ということは、よっぽどこの映画に感動したからに他なりません。 ではなぜ、市民ケーンにみんな、感動したのでしょうか。 映画やドラマ、演劇など、いくつかの例外はあるものの、そのほとんどすべてが、『人間を描く』ということに主眼を置いてきました。『人間を描く』ということは、『人間の心を描く』ともいえるでしょう。主人公の状況があり、その状況の中で主人公の心がどう変化し、そしてどんな行動を起こすか……あるいは起こしてしまうのか……。というのが一般的な物語の成り立ちです。 ところが、市民ケーンがすごいのは、『人間の心』そのものを真正面からテーマに据えたところにあるのです。ケーンはいったい、なにを考えてあんな行動をしたのか、という点にテーマを絞り込んだのです。2時間の映画ですから、描けることは限られています。その中で、ケーンという人間の人生すべてを描ききり、そしてその心の中を浮かび上がらせることに成功したのです。 そしてこの映画は、冒頭から1時間58分、ケーンの不可解なの行動を、巧みな省略、巧みな台詞、巧みな見せ方によって、断片的かつ刺激的にみせていきます。しかし、この1時間58分の真の意味は、明確にはわからないようにわざと作っています。(この辺りが、わかりにくいという人もいるかと思いますが、これは必要なわかりにくさなのです) そして最後の1分で、すべてがわかるようになっているのです。つまり、ラストシーンを除くすべてが、伏線だった、ともいえるわけです。 普通の映画は、A→B→C→Dというような運びになっていますよね。ところがこの映画は{A、B、C}→Dという運びなのです。 この運びと、一人の人間の心=人生を描く、というテーマが一体となって、見る物を掴んで話さない名作になったといえるでしょう。 もちろん、一つ一つのシーンのクオリティーの高さがそれを支えています。 よくいわれる、パンフォーカスやローアングルからのショット、なが回しなども、映画全体のテーマを表現するためにはどのような表現が適切であるのかをよくわかった表現が多用されたのであって、けして技術のための技術ではないのです。 市民ケーンは映画経験の乏しい人にとっては、やや難解に思えるかもしれませんが、いくつも映画を見て、映画経験を積んでからもう一度見ると、必ず感動できる映画だと思います。 (以上の文章はなにかの受け売りではなく、個人の考えです)
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- tutiya62
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映画でも文学でも、人それぞれの好みの問題というのがありますから、順位を付けるというのがそもそも間違っているのかも知れません。多勢の人が良いと思っても、あなたがつまらないと思うのなら、それはそれで良いのだと思います。 ただ、こういうことは言えます。子供の頃観て、まるで判らずつまらないと思っていたのが、その後人生経験を踏み、目が肥え、知識が豊かになってから観たら、よく判り、感動するということがあるわけです。・・・『市民ケーン』は、死ぬ直前に主人公が口にした「バラのつぼみ」をめぐって、その謎を解き明かすというもので、最後にそれが解かれるのですが、まずその導入部が心にとまらないと、まったく感動が希薄な2時間になってしまうおそれがあります。 それと、1941年に作られたこの映画のカメラ、各シーンの映像としての素晴らしさ、ニュース映画などを使った物語の展開の斬新さ、などに目がいけば、また違った感動、評価が得られるのではと思いますが。
お礼
仰るとおり、個人の好みがありますので、人に合わせて同じようにしようとは思っていませんが、これだけ長期間多くの人に支持されるのは何だろう、と。 でも、ここで質問させていただきよかったです。私はめったに映画を見ませんが、見るときでも表面的にしか見ていないようで、あまり見た後にも感想が残らないという、見方をしているように思います。 この「市民ケーン」を除き、他の上位ランクの映画は、私も良い印象を持ったものが多くありました。SFもの、ロマンス物、暴力物などは見たくないので、私の見る映画は自然限られてきますが、、、。 オーソンウエルズは映画撮影において革命的であったことも事実のようですが、これは彼が天才だった?こんな若い時に、彼はどこからそのような能力を獲得したのでしょう? 再度、有難う御座いました。
- ribisi
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ごく簡単に言うと、その作品が作られた背景、創作の過程から、 世に出た経緯、その後の影響も含め、一つの映画の歴史となっている、 ということでしょうか。 作品だけを観賞して、老若男女誰もが深く感動するという類の映画 ではないです。そこが『ゴッドファーザー』とは違う点ですね。
お礼
ご回答有難う御座いました。 皆さん、映画についても良くご存知ですね。 「世に出た経緯」等、こだわり派が多いのですね。 このいくつかの回答を通して、深く感動しなくても、この映画には何かがあるとの印象を受けました。 時間を見つけじっくり又、見てみたいと思います。
- isoiso0423
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ざっくりとですが、解説してみたいと思います。 19世紀の終わりに”見せ物”として登場した映画は、すぐに廃れ消えてしまうと思っていた発明者たちの想像とはまったく別の道を歩みました。 20世紀にはいると、カットバックやクローズアップといった映画ならではの表現方法が考案(かなり偶然に出来たに近いですけど)され、ストーリー性を持ち、お客さんを笑わせたり泣かせたりと、感覚に訴える媒体のひとつになります。 トーキーが発明されると、さらに発展し、1930年代の後半には映画という表現媒体は”完成の域”に到達したとも言えます。 で、1941年「市民ケーン」が登場します。 これまでの映画は、時間を軸にストーリーが展開し、起承転結という形のものばかりでした。(「舞踏会の手帳」という名作の例外もありますけど) 市民ケーンのトップシーンは主人公のケーンが「バラのつぼみ」という謎の言葉を残し死ぬところですが、いきなり主人公が死んでしまい、その主人公がどういう人間で、どんな生き方をしたのかという内容を、物語がすすむに連れて盛り上がってクライマックスに至るという起承転結をいう定石をまったく無視した形式で描ききったところに、当時の映画関係者や評論家たちは驚かされました。 それにカメラマンのグレッグ・トーランドがこの映画のために撮影機材を作ってしまったり、のちにパンフォーカスといわれる技法を編み出すにいたりました。 こういった、これまでの映画を変えてしまったところが、スゴイと言われている大きな所以です。 この作品の登場後、”完成された=もうこれ以上変えようがない”と思われていた映画は、また違った表現を模索し始め、イタリアのネオリアリズムとか、フランスのヌーベルバーグといった新たな表現方法を追求した映画が登場することにもなります。 これも「市民ケーン」という作品があってのことで、映画史にその名を刻む名作になっているわけです。 ただ、ストーリーからくる感動とか、盛り上がり的な面白さとか、そういった面から見ると、こののちに登場してくる作品群と比べ、心を揺さぶられる作品とは言い難いと思います。 個人的には『やっぱスゲェ』と唸らされる箇所は多いですけど。 興味があるようでしたら、パンフォーカスと思われていたカットは実は合成だったこと、ウエルズ以外の多くが革新的な脚本に関わっていたことなどを暴露??した「『市民ケーン』、すべて真実 」という研究書がありますよ。 http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8E%E5%B8%82%E6%B0%91%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%80%8F%E3%80%81%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6%E7%9C%9F%E5%AE%9F-%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%9F%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%8F%A2%E6%9B%B8-%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BBL-%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC/dp/4480873015/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1241346776&sr=1-1
お礼
ご回答有難う御座いました。とても詳しく記入してくださり、深いご見識に敬服しました。ひょっとして、映画関係のお仕事をされている? パンフォーカスという語に初めて接し、ネットで調べて理解できました。映画をストーリーを追ってみているだけなので、とてもそんな事に気付く事もありません。 たくさん見た映画ですが、本当に良かった映画は「アラバマ物語」、「ヒート」、「ゴッドファーザー」、等、数少なく、見方が浅いのかと、質問させていただきました。有難う御座いました。
- nezuboo
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ウイキに詳細があるのはご存知かと思いますが。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%82%E6%B0%91%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%B3 市民ケーン以前以後で映画表現が全く変わってしまったエポックメーキングな作品です。 時間系列をぐちゃぐちゃにした表現(プロット)。 部屋に散乱してるガラクタが摩天楼のビル群にかぶさるショット。 等々今日見ても驚く革新的アイデアに満ちてます。 筋も当時の実在の人物をモデルにしてスキャンダルを呼んでいます。 監督のウエルズが当時若干24歳という年齢も驚愕に値します。
お礼
新聞王ハーストを描いたこの映画が、映画制作において革新的であったということなのでね。 映画制作側のことが分かっていないと、そこまで理解できないように思えますが、普通の映画のファンはそういう人が多いのでしょうか? ただ、あのオーソンウエルズの貫禄のあるすごい忘れられない顔ですが、、、。
お礼
Wonder3316 さん、ご回答有難う御座います。 わかりやすい簡潔な日本語で理解しやすく、説明してくださり、仰る事はよくわかりました。この映画は(20年前と30年前くらい?)に2度見ましたが、最初の「教えて」で、書いたように心にも残らず、今ではあまり筋書きすらも覚えていません。 なので、「最後の1分で、すべてがわかるようになっているのです。つまり、ラストシーンを除くすべてが、伏線だった、ともいえるわけです。」と、教えてくださっても、最後の1分のことも全く覚えがありませんので、是非、又、この映画を見てみたいと思います。 有難う御座いました。