大綱については既に回答が出ていますので省略します。
内容については、90年代フィンランドの国家的プロジェクトを参考に、日本的特色である年少者自殺や介護苦自殺などへの重点化が試みられており、法令化と年次フォローアップや各府省横断の会議による推進といった、絵図面としては評価できるものです。
しかし残念ながら、一番肝心な実施体系に難があります。
フィンランドでは国民にいちばん身近な自治体が実施主体として積極的な対策を行い成果をあげましたが、日本では協力連携のレベルでとどまっています。
これだと、実地的な状況把握に基づく即応性や柔軟性が全く発揮されず、間接的に集約される自殺統計を前に、対岸の火事に水を撒くような遠まわしな対策となりがちです。
現に、プランニングとリサーチまではそこそこ詳細に、対策会議などもそれなりに開催されていますが、肝心の現場でヒトとモノを動かすような対策については、指導通達止まりであるようにしか見受けられません。
なぜそうなるのかと言えば、直接自治体や関係機関をプロジェクトに沿って実施機関として機能させるための財政基盤、つまり予算が乏しいからなのでしょう。
これは要するに、政府にとって重要政策とされていないからです。
自殺の増加が国家的問題であるという認識、自殺が増加する社会問題への対応姿勢などが不十分だと言えるのかもしれません。
実際、景気後退や高齢化、それらの結果としての社会保障の縮減といったことごとを原因とする自殺を正面から対策するというのは国家的な一大事業なのですが、経済・教育政策や企業活動の暗部とも言えるこの問題に踏み込むことに躊躇があるような印象がぬぐえません。
あるいは、キリスト教的倫理観から自殺を強く禁忌とする文化と、そうでない日本文化との違いが政策動機に影響を及ぼしているという解釈もあるかもしれませんが、これはよくわかりません。