頼母子講自体は,鎌倉時代から行われている地域の互助組織であり,法律的には,民法上の組合(民法667条)の一種にあたると考えられます。
頼母子講を違法とする法律・判例はありません。
たとえば,最高裁昭和35年6月28日判決は,民事訴訟法の当事者能力について,「頼母子講自体に当事者能力があるとしても、講管理人に掛戻金請求訴訟の原告としての当事者適格を認める妨げとならない。」として頼母子講の適法性を前提としています。
本件は,法律的にはとても難しい問題で,明確な答えは出ません。裁判例やテキストをかなり紐解いてみましたが,答えにつながるようなものはありませんでした。
本件は,組合員が組合の出資の目的たる金銭支払債務を履行しない場合として考えるべきでしょう。
本件では,親の方が,組合財産たる出資金を持ち逃げしたということでしょうか?
ここで,落札した組合員は,講に対して融資金(配当金?)の支払い請求債権を有しています。一方,講は,組合員に対して,出資義務の履行を請求する債権を有しています。
では,落札組合員は,講への融資金支払債権と講への出資金支払債務とを相殺(民法505条)できるでしょうか。相殺ができるとすれば,落札組合員は,出資金の支払い債務の全部又は一部を消滅させることができることになります。
民法には,会社法208条3項のような,相殺禁止規定はありません。また,677条で,「組合の債務者は、その債務と組合[員]に対する債権とを相殺することができない。」として,組合員ではなく組合自体への債権とは相殺できる旨規定しております。
よって,民法の規定からは,落札組合員が,残金の支払債務を相殺により全部又は一部消滅させることができるとも思われます。
しかし,出資をしないと組合はその目的たる活動ができないのだから,(裁判例はありませんが,)出資債務については,677条の組合債務には含まれないと考えることも十分可能だと思います。
このように考えれば,民法は,「金銭を出資の目的とした場合において、組合員がその出資をすることを怠ったときは、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。」としています(669条)から,他の組合員は落札組合員に出資の履行を請求することができるということになります。
では,具体的にどうすればよいのかというと,理論的には,たとえば誰かが出資金を立て替えた上,その支払い請求として簡易裁判所に少額訴訟(民事訴訟法368条以下)を起こすという方法がありますが,手間隙かけて「そこまでやるか」という問題があります。
現実的には,今回の講は解散し,新たに組合員を募って講を新設するほうがよいのではないでしょうか?
文章が長い割にお役に立てなくて申し訳有りません。
【民法】
(相殺の要件等)
第505条 2人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
(組合契約)
第667条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
(金銭出資の不履行の責任)
第669条 金銭を出資の目的とした場合において、組合員がその出資をすることを怠ったときは、その利息を支払うほか、損害の賠償をしなければならない。
【会社法】
(出資の履行)
第二百八条 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者を除く。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれの募集株式の払込金額の全額を払い込まなければならない。
2 募集株式の引受人(現物出資財産を給付する者に限る。)は、第百九十九条第一項第四号の期日又は同号の期間内に、それぞれの募集株式の払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付しなければならない。
3 募集株式の引受人は、第一項の規定による払込み又は前項の規定による給付(以下この款において「出資の履行」という。)をする債務と株式会社に対する債権とを相殺することができない。
お礼
早速回答いただき有難うございます。 無尽が違法ではないという事はわかりましたが、今回の件はすでに落札している人が、無尽の開催者が所在不明を理由にして、『すでに落札した時点で残金を支払っているので残金は払わない』等と言い訳しているのです、支払ったという確かな証拠(領収書など)は明示していません その為残金を支払うと言う人もいるので、このまま講を解散する事も、 また落札していない私を含めた3人も納得できず、困惑しております。 良いお知恵がありましたら、ご指導下さいませ。 宜しく御願い致します。 dragon-o