- ベストアンサー
刑法の違法性阻却に関する問題
- 刑法総論の違法性阻却についての問題を解説します。
- 無人の車による暴力団組長Bへの事故から始まる事件です。Xは自衛のためにCを殴り負傷させましたが、Bは飲酒により急変し死亡しました。
- この事例において、Xの罪責を考察します。特に、緊急避難と正当防衛について述べます。また、他の論点についても考えます。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
1 刑法の答案作成に当たって検討する順番 (1)構成要件,(2)違法性,(3)責任,(4)処罰阻却事由 ○上記について,行為者ごと,被害者ごと,成立する犯罪ごと,に検討。(※検討の順番を絶対に間違わないこと。順番を間違えたら,それだけで「不可」となるでしょう。) ○上記の順番で検討して,いずれかが欠いた段階で,犯罪は不成立としてよい。 ○基本的には,上記すべてを検討するべきだが,争いのある事項までの検討でも足りる。(本件の場合,責任阻却事由や処罰阻却事由の有無は問題にならず,違法性の検討後,犯罪成立の有無の結論を述べてもよい。) 2 本件の検討(例) ●Bに対する罪責 ◎住居侵入について (1)刑法(以下同じ。)130条前半の構成要件満たす。 (2)緊急避難(37条)成立するか? ◎傷害致死罪について (1)205条の構成要件満たすか? 行為後に被害者の行為が介在しており,因果関係が認められるか? →最高裁平成16年2月17日決定を参考にして,因果関係ありとする。 (2)緊急避難成立するか?(住居侵入に同じ。) ◎過失致死について(Bに対する罪責は,傷害致死罪なのか過失致死罪なのか微妙) (1)210条の構成要件満たす。 (2)過失による緊急避難の可否 ア 過失の体系論上の地位→新過失論:過失行為(結果回避義務違反)あり イ 避難意思の内容→侵害を意識し,避けようとする単純な意思で足りる。 ウ 結果回避義務の存在の有無と補充性の原則との関係→前者は構成要件,後者は違法性の問題(別問題) ア~ウ →緊急避難成立 ●Cに対する罪責 ・傷害罪について (1)204条の構成要件満たす。 (2)違法性阻却事由は,正当防衛(36条)か,緊急避難か? →Cの行為の適法性→誤想防衛の法的性格→事実の錯誤による責任故意の阻却(通説)→Cの行為は違法→正当防衛検討→正当防衛成立 ※刑法の答案作成上では,1で述べたこと以外にも,踏まえるべき重要な原則がいくつかありますが,ここでは割愛します。 ※犯罪成立の有無についての上記の結論は,単なる一例です。示された事情を分析して,ご自分で判断してください。 (ちなみに,司法試験では,上記の論点について長々述べることより,具体的判断についての説得的な論述が求められます。)