理解に苦しんで当然です。これを理解しよう、させようと思ったら一冊の本が必要になるくらいです。
何故かというと、
1.そもそも選挙のシステムが日本とは全然違う
2.州によって、選挙の仕組みや方法が全然異なる
からです。特に2があるため、日本と違って「選挙とはこういうものだ」と一律に言うことが出来ないのです。
ものすごく例外はある(というよりも例外だらけ)のですが、一番日本人に理解しやすい典型的な例を一つだけ挙げます。
前提として、今行われている「選挙」は民主党も共和党も、自分の党の内部で、大統領候補として選出してもらうための、代議員を集める選挙だと言うことを確認してください。
1)まず、大統領指名予備選挙は、政党内部の選挙のはずなのに公営選挙(税金でやる)です。投票所も学校などが使われます。
2)選挙権のある人は、色々です。アメリカは日本と違い、年齢で自動的に選挙権が来るわけではありません。登録制なのです。だから立派な成人なのに、投票を一度もしたことのない人なんて、いくらでもいます。で、とても奇妙なのは、登録の際に「自分の支持政党」を申告する必要があるのです(「支持政党無し」でも良いのですが)。
3)例えば、あなたが民主党支持で選挙登録をしておくと、今回の大統領選挙の民主党予備選挙に、選挙権が出るわけです。これを税金でやるというのが不思議ですよねぇ。スーパーチューズデーに学校に行ったら、体育館が民主党の投票会場になっていましたよ。面白いのは、州の役職state attorney なども一緒に投票することです。玄関前で、オバマの支持者が小さなビラを配っていました。
4)さて、あなたは地域の学校に投票に出かけます。一体何に対して投票するかというと、これまた実に州によって、党によって色々なのですが、例えば
・代議員の名前を投票する
・「大統領候補にこの人を指名します」という代議員「名簿」に投票する
・大統領候補者名(オバマ、ヒラリーなど)を投票する
というような方式があります。
2番目の場合は、確実に、「代議員獲得数」となるわけです。1番目の場合も、事前に誰を支持しているかは分かりますから、これも自分の「代議員数」にカウントできます。
5)この投票で党大会の代議員(delegate)が決められるわけですが、3番目の場合、つまり大統領候補者の名前を直接投票する方式の場合は、獲得投票の割合に従って代議員数が比例配分される(民主党はそうです)こともありますし、単に人気投票(代議員選出とは無関係)の場合もあります。
*ここでもややこしいのは、仮に比例配分で選出されたとしてもその代議員が、党大会で確実にその候補に投票するかどうかを、拘束する州と拘束しない州があるのです。また、民主党と共和党でも全然違います。
6)それでも、まぁ、選ばれた代議員の顔ぶれを見れば「この人はオバマ支持だな」とか「ヒラリー支持だな」というのは分かりますから、マスコミはそれも含めて、獲得代議員数として数えます。
その他にも、選挙で選ばれない代議員というのもいます(連邦議会議員など)が、こうした人達が集まって、党大会で、最終的に自分の党としての大統領候補者を決める、という流れです。
党大会での候補者指名選挙は代議員が投票者ですから、自分支持の代議員の数が過半数を超えれば、その人が例えば民主党なら民主党の正式な大統領候補として、今度は大統領選挙そのものに臨む(実質的には民主党と共和党の対決)ということになります。
イメージとしては自民党総裁選挙が一番近いです。ただ、それを公営でやっていること、有権者が必ずしも党員とは限らないこと、などが違うところでしょうかね。
で、今まで書いたことは民主党を中心にした、比較的理解しやすい事例でして、共和党はまた違いますし、州によっても選挙方法が違う、そもそも党員集会の話は全然していない、など例外だらけです。
同じアメリカ人同士でも、支持政党が違ったり住んでいる州が違ったりすると、仕組みが違うため、混乱することもあるようですよ。
ここまで日本と違うと、お互いの常識がかけ離れているため、本当に相互理解をすることが難しいです。