どれだけの空気がどこから入ったかによって違ってきますが、主に問題になるのは手術中
に頚部や胸部付近の静脈から空気が吸い込まれた場合です。手術中は体位の関係上、頚部
や胸部の静脈は陰圧になっていることが多く、もしその部分の静脈を傷つけてしまうと
一気に大量の空気が静脈に吸い込まれてしまいます。
さて、吸い込まれた大量の空気は心臓の右心系に入り、そこから肺に向かう肺動脈へと
流れ込みますが、問題はここです。広い右心室から狭い肺動脈へ一気に大量の空気が流入
するため、肺動脈で空気塞栓(=空気が血管に詰まって、血液が流れなくなること)が
できてしまい、肺胞毛細血管まで血液が行けなくなってしまいます。その結果、肺胞での
酸素・二酸化炭素の交換(=呼吸)がうまくできなくなり、最悪の場合は急性循環障害で
死亡にいたることもあります。
ただし、これはそれなりに大量の空気が流れ込んだときの話で、点滴や注射でちょっぴり
空気が静脈に入ってしまう程度なら問題ありません。少量の場合はそのまま血液に溶け
込んでしまうか、微少な気泡となって肺胞から排出されます。