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◆キングダン「政策の窓」モデルの利点・欠点について◆
お世話になっております。 キングダンの「政策の窓」というモデル(問題と政策と政治が揃ってはじめて政策が実現するというもの)を勉強しているのですが、そのモデル自体は理解できたのですが、メリットというか政策の窓モデルはどんな意義があるのかという点に疑問を持っています。 屁理屈じみた質問で申し訳無いのですが、なんかもやもやしているので、ご教授くだされば幸いです。宜しくお願い致します。
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「政策の窓」モデルは、逆の言い方をすれば、(1)政治的課題として認識されている、(2)政策アイデアが練られている、(3)政権や関係省庁が推進の立場に立っている、という条件を満たさない限り「『政策の窓』は開かれない」とも言えます。 たとえば、市民活動団体が取得できる法人制度の必要性が唱えられていましたが、なかなか実現しませんでした。ところが、1995年の阪神大震災でボランティアが脚光を集めたことを契機に、1998年にNPO法が成立しています。この場合、元々の「政策の流れ」に、「問題の流れ」が生じて、「政治の流れ」が合流した、という説明が可能だと思います。 また、草野厚『政策過程分析入門』は、村山政権下の被爆者援護法を例に挙げています。自民党政権下で成立しなかった同法について、社会党に対する「恩返し」として自民党が同調したこと、つまり政権枠組みの変化という「政治の流れ」の合流によって説明できる、としています。 このほか、草野は、1993年のコメ輸入の部分開放も「政策の窓」モデルに適合的な事例として挙げています。すなわち、与野党議員はコメ開放に消極的で、細川護煕も農水省も強力なイニシアティブを発揮したわけでもないのに、ウルグアイラウンドの妥結期限が迫っていたことによる世論の変調を受けて、「開放やむなし」の結論に至ったとのことです(この場合、「3つの流れ」が「合流したというよりも合流せざるを得なかった」)。このように、政策決定の推進アクターが積極的に見出せないときも「政策の窓」モデルの説明能力が高い事例と言えるかもしれません。 キングダンは、「3つの流れ」の独立性だけでなく相互作用も説いています。たとえば、民営化という国民に人気のある政策アイデアがあり、(郵政族じゃなくて)金融族である小泉純一郎が首相に就いたため、郵政民営化がアジェンダセッティングされたという説明も可能かもしれません。合理モデルであれ満足モデルであれ官僚政治モデルであれ「問題」に対する「政策アイデア」を前提にしていますが、「政策アイデア」が「問題」を探し出してくることもあると思います。