米国のLand Roverのサイトに同エンジンについての情報がありました。それによると、ポンプオクタン91以上が指定されていました。ポンプオクタン91以上ということは、日本でのオクタン価98以上に相当します。日本のばあい、レギュラーが90、ハイオクが100(実態値)なので、ハイオクに相当します。
BMWやフォルクスワーゲンのサイト(ドイツ)には、日本で言うところのハイオク(オクタン価98以上)を指定するものの、レギュラー(オクタン価91以上)の使用も許可し、燃費と出力の悪化を警告しています。例えばBMWの3シリーズのばあい、M3のような高出力エンジンを除いて、レギュラーも許可しています。
次にこのエンジンの諸元をみると、3,2Lの排気量、圧縮比が10.8で、トルクが317Nmなので、かなり高出力のエンジンといえます。ですからハイオクの使用が望ましいと思います。
ところで一般にエンジンは3種類あります。
(1) ハイオクのみを指定 … 高出力エンジンなので、レギュラーの使用を認めない。今回はこのケースでしょう。
(2) ハイオク使用だが、レギュラーも可能 … カタログの隅に、「レギュラーガソリンを使うと、燃費や出力の悪化があります」と書かれているばあいは、これに該当します。カタログにこの種の表現があるばあい、自動車会社は当然、レギュラーでの試験をおこなっていますので、安心して使用できます。
(3) レギュラーを指定
さて、ノッキングですが、これは燃焼状態のある特定の条件でのみ発生します。例えば、上記の(2)のようなエンジンでは、ほとんどの使用条件でノッキングは発生しません。また発生しても、ノッキングセンサで検知し、ノッキングを回避します。
ノッキングが発生するのは、高回転、高トルク(高負荷)時で、燃焼壁の冷却が不足しているばあい(厳密には、壁面温度勾配が寄与しますが、あまりに専門的になるので省略します)であり、それ以外の条件では、ノッキングは発生しません。
実際の使用条件で考えると、高速道路で全開加速を繰り返すとか、富士山を何度も登ったり、キャンピングカーを牽引していれば、ノッキング頻度が高くなります。このばあいには、ハイオクを使用しないと、最大出力も低下し、燃費も悪化します。
しかし上記(2)のエンジンのばあい、通常の走行負荷では、ノッキングしませんので、ハイオクの燃費改善効果は無意味になります。このため自動車会社では、車両を試験で使用した後、従業員の移動用に使うばあい、燃料費を節約するために、ハイオク指定車(上記の(2))でもレギュラーを使用しています。
では、自動車会社がどうしてハイオクを指定するかと申しますと、カタログでの出力値を少しでも大きくしたいからです。
なお最近のエンジンでは、直噴やスプレーガイデッド直噴により、ノッキング限界を向上しています。直噴にすると、吸気時は空気だけを吸い込み、その後、燃料を燃焼室にいれますので、その分、充填効率が向上し、燃焼室に噴霧した燃料が、周囲から蒸発潜熱を奪うため、燃焼室内の温度が低下し、高い圧縮比にしてもノッキングしにくくなります。
スプレーガイデッド直噴とは、ノッキングしやすい燃焼壁に付着しないように噴霧する噴射方式で、BMWの335iのエンジンに採用されています。ノッキングが発生する燃焼壁付近の燃料濃度が低いため、やはりノッキング限界が向上します。
ご参考になれば幸いです。