PM2.5の成分分析を行いたいとのことですが,文献等をご覧になっておられるようなので,どの辺まで細かく書けばよいかわかりませんが,書ける範囲で書きます.
PM2.5の成分分析には,大きく採取方法と分析方法の2点を考慮する必要があります.
採取方法については,まず,試料を採取するサンプラーは何をお使いになるでしょうか.様々な装置が市販されていますが,PM2.5すなわち直径2.5μm以下の粒子を分析するということは,ハイボリュームサンプラーや,環境基準のSPMを測定する装置は使用できません.SPMではなくPM2.5を採取できるヘッド(インパクターやサイクロン)が付いているものが必要になります.テープろ紙を利用した方法というのは,β線計のろ紙を利用するもののことだと思います.一般にβ線計はSPMを測るものが普及していますが,最近はPM2.5のヘッドを付けたものも売り出されていますので,それなら適用可能です.ただ,私は経験がないのですが,テープろ紙を巻いた時にろ紙同士がくっつくので,試料の保存という意味で大丈夫なのかなと思います.きちんとやるなら,ローボリュームサンプラーと言われるもので捕集するのがよいかと思います.
次に,これは分析方法にもかかわるのですが,ろ紙の選択を考える必要があります.PM2.5成分のうち何を分析されるのかによって,使うろ紙がちがってきます.例えば,主要成分を分析する,ということでしたら,少なくとも炭素成分とイオン成分を分析しなければなりません.一般に,炭素成分は石英繊維フィルターを使っています.イオン成分はテフロンフィルターやガラス繊維フィルターなどを使っています.石英繊維フィルターでも大丈夫と思います.また,金属成分の分析も行うなら,テフロンやニトロセルロースなどがあります.ただ,ろ紙の選択には,分析方法に対する適不適のほか,ガス状物質の吸着の有無(SO2や有機ガス),ろ紙のブランクの程度,吸湿性,圧力損失などの要素も考慮する必要があり,結構悩むところです.
それから,試料の捕集時間を決めることです.24時間平均の値がほしいのか,もっと細かい時間分解能でほしいのか,ということです.ただし,測定しようとしている大気のPM2.5のおおよその濃度,それに分析の感度,また試料の数(ろ紙交換や分析の手間)などの要素を考慮し,これらのバランスで決めなければなりません.
分析方法についてですが,一般には次の分析方法(装置)が使われていると思います.
炭素成分:CHN計(元素分析計)
イオン成分:イオンクロマトグラフ,インドフェノール法(NH4+),原子吸光法(Na+, K+, Ca2+, Mg2+)
金属成分:中性子放射化法,原子吸光法,蛍光X線法,ICP法(ICP-MS)
利用できる分析方法は限られているので,これが律速になって適したろ紙が決まってくる,ということも考えられます.
炭素分析については,元素状炭素(Elemental Carbon)と有機炭素(Organic Carbon)があり,両者をある温度で分離するのですが,その温度や加熱時間,加熱雰囲気については,標準的なものは今のところなく,各研究機関で異なっているのが現状です.この点が大きな課題になっています.
イオン成分については,かつての手分析に代わって,anion,cation共にイオンクロマトで分析できるようになってきました.一般に超音波抽出したあと懸濁物質をろ過して分析にかけます.
金属成分については,分析方法によって硝酸などで分解して試料を作らなければなりませんが,この酸分解法にもいろいろやり方があるようで,要は抽出率が確保されているかどうかが問題となります.
参考となる文献としては,
浮遊粒子状物質汚染予測マニュアル 環境庁大気保全局大気規制課監修 東洋館出版社 1997年
実用エアロゾルの計測と評価 本間克典 技報堂出版 1990年
があります.
お礼
どうもありがとうございます。今、自分はハイボリュームサンプラーで測定を行っています。しかし、これだと粉塵濃度は測定できるのですが成分分析はclark622さんがおしゃるとおりできません。金属の成分をICP法で調べ、またSEM撮影しようと思っています。ろ紙をどのように設置すれば良いのでしょうか?よろしくお願いします。