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国際法「国家承認の法的意義諸説」とその妥当例
国家承認の法的意義には、 ・創設的効果説 ・宣言的効果説 の二つがあり、それぞれの意味も大体理解できたのですが、 国際法の本にはそれぞれの例が詳しく書かれていません。 恐らく、イスラエル・パレスティナ・台湾(二つの中国)・北朝鮮・ケニア・東ティモールがそれなんだと思うのですが、 それぞれどちらなのか、またどういった理由でその説がとられるのかがよくわかりませんので、ご教授よろしくおねがいします。
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- kaplan
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ご質問にはイスラエルその他が”それ”なのだとありますが,これはどういう意味なのか今ひとつ分かりかねます.イスラエルその他が国家である例だということでしょうか,国家でない例だということでしょうか,あるいは学説によって国家であるかないかが問題になる例だということでしょうか. おそらく最後に挙げた意味で”それ”とおっしゃっていると思いますので,その前提で以下をお読みください. 国家承認の法的意義を考えた場合,留意しなければならないことがあります. 国際法主体としての国家の存在(あるいは不在)は国際法自体の問題です.つまり,国際法そのものにとって,ある”entity”が国家であるかないかは,たとえばその”entity”が多国間条約の締約国となる資格を有するのか,その行為が慣習法上の慣行となりうるのか,また国家責任を負うことができるのかなどといった問題につながるということです. これら国際法プロパーの問題は,ある国家(A)がある国家(B)を承認したあるいはしなかった結果生じる二国間関係の法的問題とは性格が異なります.とくに注意しなければならないのは,たとえA以外にBを承認する国家が皆無だったとしても,またBが領土など国際法の定める基本的な要件を欠いていたとしても,Aの国内法上はBが主権国家として様々な権利を有したり義務を負ったりすることがあるということです.白人政権が一方的に独立宣言を行った南ローデシア,アパルトヘイト下にあった南アフリカが半ば恣意的に創設し唯一の承認国となったトランスカイ,現在でもトルコを除くとどの国からも承認されていない北キプロス,またちょっと変わったところでは領土がないにもかかわらず数十カ国と外交関係を持っている(つまり承認されている)マルタ騎士団などがあります. Antoinetteさんが挙げた例のうち,国際法プロパーとして国家承認の学説によって国家であるかないかが多少とも問題になるのはおそらくパレスティナと台湾でしょう.パレスティナはアラブ諸国からは独立国家として承認され,また国際機関であるアラブ連盟にはフルメンバーとして加盟していますが,日本を含めたその他の国からは国家として承認されていませんし,国際連合ではオブザーバーとして扱われています.台湾はご存知のとおり中華人民共和国が掲げる”One China”外交政策によって国家承認の数が減少しています. パレスティナと台湾がなぜここで問題になりうるのかというと,両者とも領土,人民,政府の条件をほぼ満たし,かつ限定的ではあるもののモンテビデオ条約のいう外交能力を有しているといえなくないからです.領土,人民,政府,外交能力の四要素を国家の必要十分条件とすれば,人によってはパレスティナも台湾も国際法上の国家であるということもありえるわけですね.それはすなわち国家承認の制限的効果説を支持するということです.逆に国家承認の創設的効果説的視点からみれば,パレスティナと台湾は国際法上の国家でない,あるいは”国家性”が十分でない疑いが生じます. 国家承認の効果を考えるにあたり,Antoinetteさんの挙げたほかの例(すなわちイスラエル,北朝鮮,ケニア,東ティモール)は残念ながらあまり参考になるとはいえません.なぜならこれらが 一.他国が承認しているから国際法主体としての国家である と考えるのと, 二.国際法主体としての国家であるから他国が承認している と考えるのとの間であまり差を生み出さないからです.エジプトやヨルダンを除いた大多数のアラブ諸国はイスラエルを承認していませんが,このことのみをもって創設的効果説上イスラエルが国家として成立していないと結論付けるのにはかなり無理があるように思われます.創設的効果説の問題点としてよく挙げられるものに,ある”entity”が国際法上の国家として成立するためにはいったいいくつ(あるいは何パーセント)ぐらいの国から承認されなければいけないのか誰にも分からないというここがあります. 南ローデシア,トランスカイや北キプロスなどの例でも明らかなように,件の”entity”がどのように出現したかによって(たとえば重大な国際法違反が絡んでいるなど),その”entity”を国家承認しない国際法義務が生ずるとする見解もあります.
お礼
ありがとうございました。