もちろん、総理大臣の発言ひとつだけで日本経済が変わるわけはあり
ません。しかし、その発言どおりに腰を据えた政策を実行すれば、経
済に大きな影響をあたえます。
株式市場は、現在の経済の状況を反映させているだけではなく、将来
の予想にもとづいて競争が行われているところです。人より早く景気
回復の芽を発見して株を買っておけば、本当に景気が向上したときに
は値段が上がって儲かるのですから、株式市場の参加者は細かいこと
にも神経を尖らせています。景気後退の場合も、早く売ってしまえば
損を防げるので同じことです(値下がりを利益に結びつける方法もあ
ります)。
ですから、そのように景気の変動を予感させるような「首相の発言ひ
とつ」で買いや売りが片方に集まり、株式市場全体を動かしてしまう
わけです。また、「この発言は買いを集めるだろうから、知れ渡る前
に買ってやろう」と考える人や、単純に乗り遅れまいとして売買する
人もいますから、市場を動かす原因と値動きが不釣合いになってしま
うのはよくあることなのです。
別の理由もあります。株式市場は大した理由も無いのに、売り買いの
ちょっとしたバランスの崩れから上下に動くことがあります。マスコ
ミがこれを報道するときに「理由も無く上がった(下がった)」とい
うと格好がつかないので、「首相の発言」を引き合いに出して理由づ
けすることもあるかも知れません。