独占禁止法の基本は、買収の阻止ではなく強引な買収、売却によって独占や寡占状態を排除し、優越的な地位の乱用を防ぐ物です。もちろん、寡占率や独占率もある程度はみていますけど……それよりも、買収や売却が本当に正しく行われているか?を重視しています。
小売り業の場合、独占・寡占状態になり、優越的な地位を獲得すると判断されるなら、買収に対して一定の条件が付くことになるかもしれませんが、だからといって買収が出来なくなる訳ではありません。これが、製造業や無店舗サービス業だと買収の許認可が降りないこともありますけど。それも、海外事業比率が関連する事業も結構あるので、今は難しい。
小売り業の場合は、もしも地域独占に繋がると判断される場合は、一部の優良店舗を閉鎖または競合店に譲渡することで、買収が許諾されることになりますから、買収が禁止されることはないでしょう。
これを事業社側が許諾しない場合は、買収が停止されることがありますけど、元々イオングループはM&Aで成長してきた企業ですから、それらが伴うかどうかも確認した上で、西友からの提案に合意したと思われますし、今後審査の中でそれがあると見られるなら、速やかに応じるでしょう。
なお、現在の独占禁止法は90年代~00年代に法の趣旨が少し変わっており、国内だけの独占・寡占率で必ずしも考えない仕組みとなっていますので、事業規模だけでの見込みではありませんのでご注意下さい。
尚、独占禁止法は文字通り優越的な地位を乱用した独占を禁止する物であり、不正競争防止法とセットになる法律です。前者は主に事業者に罰則(通常は課徴金、罰金)が科せられ、後者はそれを指示した人物や組織の人間、組織を含めたものに刑事罰や民事訴訟として課される法律です。
そもそもこれらの法律の趣旨は、独占や寡占になると、物の値段を不当につり上げたり、質の悪い物を売ることで消費者に不利益を与えたり、場合によっては産業が滞ることによる社会の腐敗が起きるのを防ぐためのものです。これを優越的な地位といいます。
法律では、それらの傾向が見られない公正な競争の中でのやりとりならば、買収や売却を認めています。逆にこれらの傾向が見られず、独占や寡占に見えなくても、裏側で複数の事業者が金額についての取り決めを決めていたり、ある地域ではこれを売らないとか、売れないようにするといった対処をしていた場合、即ちカルテルなどの不当な裏取引が確認された場合は、独占禁止法や不正競争防止法による処分が下されることがあります。
これらは、買収・売却・譲渡が行われるタイミングで生じるとは限らず、後から独占禁止法に基づく排除命令や事業分割命令、譲渡命令が出る場合があることを意味しています。
尚、優越的な地位の乱用やカルテルなどの問題が確認された事業者は後の事業譲渡や買収審査が厳しくなるはずです。まあ、日本は政府が裏金塗れだったから……知らんけど。
ということになります。
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