印鑑というのは、いわゆる三文判でも力は発揮します。
三文判と言うのは、依頼して掘ってもらうものでなく、最初から山田だの田中だの鈴木だのという、出現頻度が高いものをあらかじめ作って店で並べて売っているものです。なんか大量生産でつくられたものに見えるからダメなんじゃ
ないかと考えるかもしれませんが、実は全く同じものがふたつありません。
細かい理由を述べるのが面倒だから言いますけど、「印影」というのは二つ同じものが存在できない根拠があるからです。実は印影というのは3次元のものだからです。
ところが、ゴム印とかは大量生産で全く同じものは製造可能です。2次元だからです。それに準じて印の中にインクが染ませているようなシャチハタ型のものも、全く同じ印になる性質があるので、印影としては認めないことになっています。
そういうわけですので、旅先なんかでシャチハタ以外に自分の印がなくてこまったときには、印鑑やにいってたまたま苗字を見つけて買ったものを、銀行印にすることもできますし実印にすることも可能です。
銀行印というものだけ特別に作りたいと思うなら作るのは自由ですが、所詮口座をつくるために登録する印ですから、それこそ三文判でも一切問題はありません。
一応そこまで、事実の話をしました。
で、ここからなんですけど、ある目的のための印は、それだけ特別にしておいた方が無難です。これは今言ったことと違うじゃないかと抗議されかねませんが、実はこういうことが起こるからです。
昔、謝礼だったか何かを支払いたいと言われてものすごく一時的なものだとおもったので会社の近くの銀行で口座を一つ作ろうと思いました。忙しかったので部下に、その辺で適当に自分の苗字のハンコを買ってその銀行で普通口座つくってきてくれないか、と頼んだことがあります。自分でハンコもこれがいいと思ったわけでなく、銀行員の顔も見ないでやりましたので適当です。もちろんそのハンコも大事なハンコ類というように金庫にしまいました。
実は支払をするためATMを使って支払自体はうまくいったのですけど、うっかりしてキャッシュカードを置き忘れたことがありました。なんというバカだというレベルですけど、すぐに銀行から電話がかかってきて、お預かりしていますと。で、受け取り時には届け出の銀行印をお持ちくださいと。
当然そんなものをもって歩いていませんし、家に帰ってもすぐにどれだかわからないんです。うーん、と困っていたら銀行曰く、もしお暇がないようだったら書留でお送りします、と。
よかった。申し訳ないけどそうしてほしい、と頼み、その場合は郵便局から書留をもらうためのハンコが要るだけで、それは銀行印の必要がない。
その口座、結構入金が続くようなことになり、以後引っ越するときに困った。
住所変更をしなければならないとき印鑑が必要なんですが、さてどれだったかわからない。実印なんかは別途作ってますのでこれは見間違えないけど、ちょこっとしたときに購入した三文判が何個かあるのです。朱肉を使ってついてみたら全部別々のものだということがわかりますけど、実は銀行通帳には印影がないんですね。というわけで、どれがその口座のものだったかわからなくなったんです。
そういうことがあるから、銀行印は、別に高価な印鑑である必要はありませんが、区別がつくように管理できるのが必要だと言っておきたいのです。
もし銀行印として使ったならその印の後ろに傷でもつけておいて、明確に判別できるようにしておくべきなのです。