>>何かいい方法は無いでしょうか?
私も発電所で潤滑油管理とか管理指標の改定作業をしていたんですが、なにせい
昔々の話なので思い出しながら...。
現状では、廃油といっても「機器メーカが交換を推奨するから抜き取って廃油
にしている」ってだけでしょうから、要は個々の潤滑油に合わせた管理をして
いる訳でもないでしょうし、言うなれば公約数的な管理で「廃油」として
定義しているんでしょう。
となると、現場次第では再生(再充填)は可能です。
自社に適合した、個々の管理をすれば良いんですから。
ただし....。
ここにご相談されるという事は自社に技術者が居ない&適切なアドバイスを
してくれる人がいないということで、『現場も見ないで大事な事を決めなくて
はならない』って状況だと判断させていただいて、以下に概要を。
□
まず、発電機油を再利用する事を機器メーカが推奨しない場合(積極的には止めて
くださいと行ってくる場合)においては、潤滑油が劣化し、それが機器破損にまで
至った場合、機器メーカーとの保証問題がこじれる事は覚悟してください。
ですので「自分達で壊さないように管理する」とう社内コンセンサスが必要ですし
それが無い場合、破損したことに対する社内での責任問題が発生し、担当者など
がワリを喰う事になるでしょうしね。
この場合、潤滑油メーカーが相談に乗ってくれていたら故障確率も減りますし
そういうコンサルをする会社もありますが、それを使うか否かは別の問題と
して.....。
□
一度に出る廃油の量、仕様系統(※1)、潤滑油のメーカ&品番、管理体制が
解らないので、確固としたご回答は出来ないんですが....。
※1:ディーゼル発電機でしたら、大抵は本体封入だけと思いますが
ひょっとしてタンク間との再循環があるかどうか....等。
(まず、そんな系統は無いでしょうが.....。)
廃油を再利用する際には4つのポイントがあります。
1)再充填(補充)しようとする廃油自体の性状確認
2)再充填(補充)後の、運転中の定期的な潤滑油性状確認(傾向確認)
3)潤滑油全体としての(急激な)劣化防止策
4)劣化して交換しなければならない場合のバックアップ策
このうち、1)は必須、2)はホボ必須、3)4)は強く推奨される(機器の重要度や運転
状況によって変化する)と考えて良いでしょう。
□
まずは廃油自体の性状確認から。
確認すべき項目(分析項目)は以下の通りです。
a)動粘度
b)比重
c)全酸価(油によっては全アルカリ価)
d)水分(通常はn-ヘキサン抽出物質)
e)色相(ASTM)
f)汚染度(通常はミリポア重量)
g)酸価安定度試験(通常はRBOT、油によってはISOT)
h)乳化安定度試験(抗乳化性試験)
i)酸化防止剤残存率
これらが『管理値』以内であると判断できた場合、廃油の再投入量と新油の補充
量を決定します。
この分析項目は、運転中の管理項目とも共通します。
なお、管理値は潤滑油メーカーに推奨値に乗る場合が多いですが、過去の劣化
傾向・運転条件・機器の重要度等を勘案して、独自に設定することが理想です。
□
運転中に定期的に潤滑油の性状を確認し、「現在の性能は大丈夫か」と共に劣化
傾向を把握して、次回交換時期を決定します。
性状確認頻度は、運転状況(運転条件)・潤滑油の種類・機器の重要度によって
変わりますし、それによって分析項目も異なります。
通常のパターンは以下の通りです。
1)日常点検
1日に1回、色相チェックと水分混入、乳化の有無をチェックします。
上の分析方法とは異なり、サンプルを試験管にでも取り 目視で行い
ます。
性状値の把握という面では意義が薄いのですが、何らかのトラブルに
よって機器の損傷に至る事を防止する面では重要です。
2)月次チェック
月に1回程度、上記a)~e)を行います。
中でもc)d)は重要。 他の3点は場合によっては割愛も可能です。
ディーゼルなら、出来ればf)もやりたいのですが、それは管理体制
に関わってきます。(自社で分析するならやりましょう。)
3)数ヶ月に1回のチェック
運転状況(運転条件)等によって最も頻度が変わる分析です。
いわば、これが傾向監視の柱で、上記分析項目を全て行います。
通常は潤滑油メーカーの分析所に送って行いますが、それ以外の
箇所で行ってもかまいません。
これらの分析値を、絶対値(現在の値がokかどうか)と劣化傾向(次回分析
や点検までに特別な措置を取らないで良いかどうか)の面で判断します。
□
劣化防止策について。
最近は、潤滑油の性能が上がった事と機器の故障率低下等で、通常はそうそう
急激な劣化も起こりませんが、機器側の故障(例えば水配管系統の破損による
潤滑油への水分混入)等が発生しますと、ダメージがモロに潤滑油へかぶさっ
て来て、機器全体の機能喪失につながりますので、出来たら何らかの防止策を
採りたいところです。
ディーゼルならほぼ無いでしょうが、潤滑油循環系等があるなら、その間に
水分の分離装置を入れるとか、簡易なフィルターをかませるとか。
現実的には、上記の日常点検で防止することになります。
□
交換しなければならない場合のバックアップ策について。
潤滑油は常に予備を持っておくか、使用している潤滑油の納期を確認してお
くべきでしょう。
例えば、非常用として設置が義務付けられている発電機なら、長期間の機能
喪失は法令(精神)違反の可能性もありますしね。
□
項目に入りませんが重要な点を。
潤滑油について、知識を持った人を確保する必要があるでしょう。
例えば、発電所ですと化学屋(化学系の教育を受けた社員)に潤滑油管理
の教育を行い、管理を行わせます。
今回は機器メーカーの推奨から外れる、つまり「自分で確認するから良いよ」
ということですから、自社に知識がなければ第一歩も始まらないわけですね。
もちろん、潤滑油メーカーと手を組んで管理していくという方法もあり、コン
サル会社に丸投げする方法もあるんですが、潤滑油メーカーは「自社で何もわ
からない所を相手にして責任を負わされたら堪らないよ」って態度になるでし
ょうし、コンサル会社と相談して色々決める場合にも、自社で最低限の話が
解る技術者を保持する事は必要です。
教育については、潤滑油メーカーに問い合わせ等をすれば解るでしょう。
□
で、恐ろしく長文になったんですが.... ^^;
これって、上っ面をナゾッただけなんですね。
以上の内容が正しいかどうかは別にして(正しいとは思っていますが)、これ
を書ける位の知識を持った人間でも、過去の劣化実績等の裏づけを無しに管理
しろと云われたら厳しいわけで、それでも機器の重要度を勘案してやっちゃう
場合もありますが.....。
お礼
大変詳しく教えていただきありがとうございます。 早速、実施してみたいと思います。 人材はお国柄いくらでも手に入りますので、後は実行力で何とかしていきます。 本当にありがとうございました。