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※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:チャイコフスキーのアンダンテカンタービレの原曲って)

チャイコフスキーのアンダンテカンタービレの原曲って

このQ&Aのポイント
  • 『Сидел Ваня на диване』は本当にチャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレのモチーフになった曲ってことでいいの?
  • 曲から受ける印象が全然違うし、メロディーも最初の所がちょっと似ているだけなんですけれど。
  • チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレと『Сидел Ваня на диване』の関係性に疑問があります。

質問者が選んだベストアンサー

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回答No.1

これはかなり専門的な文献研究が必要となり、このようなQ&Aサイトで完全につきとめるのは無理です。私は一応、クラシックの作曲、演奏、研究を専門とする者で、手持ちの資料や、インターネットでの複数言語での検索である程度までは調べることができますが、原曲となった民謡の音源をインターネット上で見つけることは、まず無理だと思います。以下、チャイコフスキーの旋律に関する私の見解です。 Youtubeに出ている「Сидел Ваня на диване」という歌は、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレのテーマとなった民謡とは、まず間違いなく無関係、別の曲です。 第一に、歌詞が違います。チャイコフスキーが採譜した民謡の歌詞の全体は不明ですが、冒頭部分については、二つの情報があります。 「ヴァ―ニャは長椅子に座って、パイプでタバコを吸っていた」という歌詞 Сидел Ваня на диване, курил трубку с табаком http://www.tchaikov.ru/bio018.html 「ヴァ―ニャは長椅子に座って、ラム酒を一杯そそいだ」という歌詞(ウクライナ語) Сидел Ваня на диване, Стакан рому наливал. Не наливши полстакана, Сам за Катенькой послал. http://m.litfile.net/read/121307/136119-137572?page=84 http://www.pressarchive.ru/moskovskie-novosti/1998/11/10/164676.html チャイコフスキーが採譜した民謡はごく短いものなので、上の4行が歌詞の全てである可能性も高いです。これに対して、Youtubeの歌の方の歌詞は「お茶」になっており、全体の内容は、若い女性への求愛の歌。 http://megalyrics.ru/lyric/pielaghieia/sidiel-vania-na-divanie.htm 第二に、チャイコフスキーが弦楽四重奏曲第1番を書いたのは1871年ですが、この旋律を採譜したのは1869年で、この年に書かれた、「50のロシア民謡」の第2巻にすでに収められています。「50のロシア民謡」第1巻25曲は1868年に書かれ、そのうちの23曲は、コンスタンティン・ヴィルボアが集めた民謡に基づき、残る2曲のうち1曲はアレクサンドル・オストロフスキーという人物から提供されたもので、もう一つはチャイコフスキー自身が採譜したもの。1869年に成立した第2巻25曲は、そのうちの24曲が作曲家バラキレフの集めた民謡で、残る一つが、チャイコフスキー自身がウクライナのカメンカで実際に聞いて採譜した「ヴァ―ニャは長椅子に座って」です。この「50のロシア民謡」は、民謡をそのままピアノ連弾用に編曲したごく簡素なもので、採譜したままのものと考えてよいでしょう。この中に収められている「ヴァ―ニャは長椅子に座って」とアンダンテ・カンタービレのテーマを比較すると、小節割りと拍子の表記が違うだけで、旋律そのものには全く手が加えられていません。 楽譜 50のロシア民謡(第47曲) http://burrito.whatbox.ca:15263/imglnks/usimg/4/41/IMSLP20980-PMLP48631-Tchaik_TH176.pdf 試聴 50のロシア民謡 トラック6 http://www.amazon.com/Four-Hands-at-One-Piano/dp/B00006RY1V 第三に、この歌は、チャイコフスキーの友人だったニコライ・カシュキンによる採譜も存在するとのことです。これは入手不可能なので、実際に比較することは不可能ですが、カシュキンの採譜があるため、チャイコフスキーは自分で書き取ったのではなく、1869年より前にカシュキンから聞いたのではないかという異説があります。これは、弟、モデスト・チャイコフスキーによる伝記や、リムスキー・コルサコフへの手紙に、そう思えるような記述があるかららしいのですが、チャイコフスキーの版とカシュキンの版では、歌の最後の部分が異なっているため、この説は疑問視されており、やはりチャイコフスキー自身が聞いて書き取ったとする説が一般的です。ただ、歌の終わりの部分だけが異なるということであれば、それ以外はカシュキンの採譜と大体一致していると考えられ、チャイコフスキーが、原曲が認識できないほど書き換えているとは考えにくいです。 第四に、チャイコフスキーに限らず、多くの国の作曲家が、自国の民謡を採取し、「民謡集」の名で発表していますが、これには研究、保存の意味もあります。伴奏部分などは新たに編曲されることが多いですが、本来の目的から言って、旋律そのものに大きく手が加えられるということは基本的にありません。弦楽四重奏曲や交響曲などの作品中の場合はともかく、ピアノ連弾のための「50のロシア民謡」のような編曲の場合も同様です。こういう曲集には、よく知られた民謡を、広く一般の人が楽しめるよう提供する意味もありますので、なおさらです。なお、作曲家同士の間でも情報交換がありましたが、チャイコフスキーは、この歌をリムスキー・コルサコフに提供しており、リムスキー・コルサコフはこれを、自分の「100のロシア民謡作品24」に収録していることがわかっています。民謡の収集のための提供なので、原曲がわからないほど変えたものを渡したということは考えられませんが、残念ながら、リムスキー・コルサコフのこの曲の楽譜も入手困難で、無料楽譜提供サイトにもまだアップロードされていません。もし両者を比較することができ、旋律が一致するようなら、チャイコフスキーが大きく改変していないことがはっきりしますが、今のところそこまでは確定できません。 このアンダンテ・カンタービレには、もう一つよく知られたエピソードがあります。それは、アントン・ルビンシュタインの提案で、作家トルストイのための演奏会がモスクワ音楽院で催されたおりにこの曲が演奏され、それを聴いたトルストイが涙を流した、というものです。伝記などには詳しい説明はありませんが、トルストイ自身が民謡に詳しく、自分でも収集をしていたことが知られているので、聞いてすぐに何の民謡かわかったという可能性もあります。 「50のロシア民謡」の楽譜でわかるように、これはごく短い歌です。アンダンテ・カンタービレの冒頭では、第16小節目までがこの歌の引用で、それ以降は、クラシックの作曲法によるチャイコフスキーの自由な創作です。 以上の理由から、チャイコフスキーは原曲を改変しておらず、Youtubeに出てくる歌とは全く別のものであるというのが私の見解です。では、原曲の民謡は今どうなっているのかという問題が残りますが、1870年代によく知られていた民謡、と言う記述があるので、今はあまり歌われていないか、あるいは、曲があまりにも短いので、独立した一曲の民謡として演奏したり録音したりする機会に恵まれない、という可能性が考えられます。 私が提供できる情報は以上です。もし、原曲の民謡の演奏が聞きたいなどのさらなる情報が必要ならば、専門的なサイトで問い合わせることをお勧めします。チャイコフスキー・リサーチという英語のサイトがあり、メールでの問い合わせが可能ですし、ロシア音楽協会に問い合わせることもできます。 チャイコフスキー・リサーチ http://wiki.tchaikovsky-research.net/wiki/Main_Page ロシア音楽協会 http://www.irms.ru/en/contacts_en.html

steinfluss
質問者

お礼

ご回答ありがとうございます。最近のOKWaveの回答の質の低下を残念に思っておりましたが、Tastenkastenさんのように知識をお持ちで詳細に回答する能力のあるかたもまだいらっしゃるのだと知り安堵しております。 なるほど、私が質問に挙げたビデオの『Сидел Ваня на диване』が『アンダンテ・カンタービレ』ではなかったことには納得がいきました。チャイコフスキーは作品中に原曲をそのまま取り込んだわけですから、その民謡がどんなメロディーであったかの弁別は容易であると。原曲が見つからなかったことはちょっぴり残念ですが、『Сидел Ваня на диване』が無関係の歌であることが分かったのは一つの収穫です。 そうするとどうしても気になってしまうのが、Tastenkastenさんも言及してらっしゃるとおり、この原曲に当たる民謡はどこへ行ってしまったのだろうということです。『アンダンテ・カンタービレ』が有名な曲であるだけに、この民謡の正体を知りたい人たちは私以外にもきっとおおぜいおいでだと思われますので、誰かが調査したものがネット上で比較的容易に入手できるとにらんでいたのですが、案外そうでもなかったのですね。 チャイコフスキーやリムスキー・コルサコフが民謡に対して果たした役割も知ることができました。現在でもロシア民謡文化が保たれているのは彼らのおかげもあるのでしょうか。 リンクしてくださった「50のロシア民謡」に載っている楽曲の大多数が私の知らない曲であるだけに、ロシアの音楽文化の懐の深さを思い知らされます。余談ですが、この資料の最後の曲はあの『ヴォルガの舟歌』ですね。こういう所から有名になったのかと関心が寄せられました。 深夜の眠たい時にコメントを書いておりますので、文意が乱れたところがあるかもしれませんがご容赦ください。論理的で説得力のあるご回答をくださって感謝しております。

その他の回答 (1)

回答No.2

お礼有難うございます。 読ませていただいた後、改めてもう一度調べたところ、以下のことがわかりました。 まず、民謡の題名は「秋の旅」だと、下の日本語のサイトに出ています。 http://blogs.yahoo.co.jp/yhakrymd/65289755.html 上のサイトに出ているロシア語の歌詞は、回答No.1で御紹介したものとはまた違います。民謡の歌詞なので、定まったものはないのかもしれません。草原次男氏の訳は、音符に当てはめるための意訳と推定しますが、紹介されているロシア語の歌詞とは少しかけ離れすぎているようなので、これも違う原詩をもとにした訳である可能性があります。 また、大したサイトではありませんが、「秋の旅」というタイトルをヒントに検索したところ、次のものが出ました。 http://www.asahi-net.or.jp/~HB9T-KTD/music/Japan/Studio/Midi/Traditional/andante_cantabile.html 安っぽいソフトで作成したらしいMIDI音源と楽譜なので、こういうものがあるらしいという程度の参考です。なお、最初のサイトで言及されている「少年少女歌唱曲全集 世界の民謡篇」を国立国会図書館で調べてみましたが、複写サービスが受けられます。ただ、「秋の旅」という題名の歌は書誌情報にはありません。「ワーニア(さびしいよる)」(196ページ)という題名の曲が収録されているので、もしかするとこれのことかもしれません。左側の「書誌情報」の「詳細レコード表示にする」をクリックすると、目次が出ます。場所が特定できる場合は、遠隔複写サービスといって、コピーを郵送してもらうことができます。 少年少女歌唱曲全集. 9 (世界民謡集) http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1630331 遠隔複写サービス http://www.ndl.go.jp/jp/service/copy3.html これらの情報をもとに、改めてYoutubeで検索してみているのですが、音源はなかなか見つかりません。私は昔、世界中の民族音楽や日本の伝統音楽を研究していたときがあったのですが、ロシア方面には手を伸ばしていなかったので、あまり詳しくありません。 >最近のOKWaveの回答の質の低下を残念に思っておりましたが 昨年、リニューアルを始めたころから、質問、回答ともに、質、量が低下しました。私はもともと教えてgoo!の会員です。分離後、こちらにも登録しましたが、最近は両サイトを通じて、回答に値する質問がほとんどありません。曲の紹介を求める質問などにうっかり詳しく回答すると、こんなのは検索すればだれでもできると誤解、攻撃されますので、うっかり手を出せません。また、半分近くの回答は、コメントもないまま放置されます・・・

steinfluss
質問者

お礼

再度のご回答ありがとうございます。 「秋の旅」という邦題があるのですか。これは初耳でした。JASRACの検索サービスでは出てきませんでしたが、必ずしもJASRACに管理委託しているわけでもなさそうですし、またこれが正式なタイトルと限ったわけでもないのかもしれませんね。「アンダンテ・カンタービレ」の通称のほうが広く知られているせいもあるでしょうか。 ご回答より「ワーニャ(さびしいよる)」との邦題もありうると理解されますが、ロシア語での原題が「Ваня」であるのかそれとも「50のロシア民謡」にあるように「Сидел Ваня」であるのかも気になる点ではあります(質問文に記入しましたウィキペディアロシア語版では「Сидел Ваня на диване」を原曲のタイトルとしています)。もちろん民謡ですからはっきりと定まった題名が無いのかもしれませんし、同じまたはよく似た題名のついた複数の民謡が存在していることもままあることではあります。 引用されているサイト「音楽研究所」さんは、私もときどき利用しています。質の面ではともかく、音源の数がむやみと多いので、その数量のおかげでそれなりの資料にはなっております。 気軽な気持ちで尋ねた質問でありますが、詳細な情報や文献などを提示してくださる回答者さんに巡り合えて、答えそのものは得られなかったものの非常に満足度の高い理解を得られました。また国会図書館の複写サービスをご教示くださったことも感謝しております。今の陣ではまだ利用しようというところには至っておりませんが、いつか何かの折に利用するかもしれません。ありがとうございます。

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