循環器内科医です。同様な患者さんを多く見てきた経験から私見を述べます。
実際の心電図波形を見ていないため、正確なことは言えませんが、ST-T異常を伴うQ波もしくはQSパターンとなっている場合は、陳旧性心筋梗塞の可能性が低くないと感じます。
心筋梗塞の方は、全ての人が、胸の苦しみに悶えながら来院するとは限りません。糖尿病患者の無痛性心筋梗塞はしばしば経験しますし、糖尿病と診断されておらず、明らかな胸の苦しみがなくても、「肩から左腕にかけての異常な凝り感」が、唯一の自覚症状であることも、決して珍しくありません。
ご質問内容にあるように、「重い荷物をもって階段を上ると肩が張る」は狭心症症状と考えても、不思議ではありませんし、「酷い肩こりがあった」(が、我慢して寝たら、翌日にはなんとなく治まっていた、と推察します)ということも、今までの経験の中でも、多くありました。
年齢、性別、高血圧・高脂血症の既往、は心筋梗塞の危険因子して矛盾しません。喫煙歴はありませんか?
エコーで壁運動異常(心筋が壊死して、その収縮が部分的に見られなくなること)がすでに指摘されているのであれば、ますます可能性は高いかなと推察いたします。
冠動脈CTまではお済であるとのことですので、そこである程度方向性が決定されると思います。冠動脈の閉塞もしくは高度狭窄が認められれば、心臓カテーテルは必須ですし、もしツルツルな綺麗な血管であれば、カテーテルまでは行わないと思われますが、これに関しては担当医とよくご相談ください。
(怖いことを言って、大変恐縮ですが、カテーテルの結果、心電図だけでは指摘できないような、高度狭窄が複数個所見つかり、バイパス手術が必要となる、可能性も排除できません。決して珍しいことでもありません。お心積もりはされておいた方がいいと思います。)
なお、(もし陳旧性心筋梗塞であったと仮定して、さらに適切な治療が済んだとした上で)仕事に関してですが、私の患者さんも、多くは(50代であれば尚更)皆さん復帰されています。ただ、今まで以上に、高血圧の管理はもちろんのこと、食事管理・運動増進によるコレステロール・血糖値の低下は重要です。禁煙の徹底は必須です。自分の健康管理(次に心筋梗塞を起こさないために)も、お仕事と同様に、責任ある仕事となります。
仕事を辞めれば、次の心筋梗塞は起こさないという保証はどこにもありませんので、今の立場からきっぱり退く必要はないとは思います。ただ、今後は投薬治療と、定期的な通院が必要になります。仕事が忙しすぎて、いつの間にか通院を忘れ、薬も切らしてしまった、となると、大変な目にあいますので、今のうちから、仕事の責任・役割を他の方と分担できるなら、(根回し等)調整をしておいた方がいいかも知れません。
いずれにせよ、現段階での検査結果が出そろった時点で、先を考えた方がよさそうです。お大事なさってください。
お礼
激務の下、こんなにご丁寧に専門的な回答を賜り、心から感謝致します。とてもよく理解できました。心して挑む覚悟をつけたいと思います。本当にありがとうございました。