御質問の内容とは多少それますが、まず最初に。
>トレモロプレートがブリッジ寄りだと、それに伴ってテイルピースも近くなり弦のテンションが変わると思うのですが、
弦のテンションは、弦のゲージ(太さ)とスケール(ナット~ブリッジ間の距離)だけで決まります。
これはテイルピースの位置がどうとかいう以前に振動工学上の事実であり、例外はありません。(よく考えてみて下さい。ナット~ブリッジ間の距離が同じで弦のテンションが増減したら、音程が変わってしまいますよ。)
>弦のテンションが強くなって、音が硬めになるということでしょうか?
故に、弦のテンションはテイルピースの位置とは関係ありません。テイルピースがどこにあろうと、ナット~ブリッジ間の距離が同じであれば、トーンに明確な差は出ません。
っとテンションの話は以上で、さてそれでは次にブリッジ~テイルピース間の距離が変わるとどうなるか?っという話です
(1)ブリッジ~テイルピース間の距離が変わると、弦がブリッジに当る角度が変わります。(マンガを書くと判り易いですが、テイルピースがブリッジに近いと、その分弦は急角度でブリッジに当る事になります。)
ブリッジでの弦の角度が変わると、当然弦がブリッジに『押し付けられる』強さが変わり、ブリッジ上での摩擦抵抗が変わります。
これは、チョーキングやビブラート時の、左手の『手応え感』に影響します。ブリッジでの弦の角度がより急角度だと抵抗が増え、左手の手応えもその分大きくなります。
世間で『テンションが強い/弱い』と言っていることの正体は、実はこの左手の手応えです。
(2)またブリッジに弦を押し付けるチカラは、ボディに弦振動が伝達される(=吸収される)量が変わります。
ブリッジに弦を押し付けるチカラを強くすると弦とブリッジの接触部の剛性が上がり、ボディに向けてより多くの弦振動が逃げる事になります。
またボディに逃げる振動は、ブリッジ側の質量や剛性によって逃げやすい周波数と逃げにくい周波数に分かれます。(振動工学上は、『特定周波数のパワースペクトルが減衰する』ということになります。)
これらは、サスティンの減少、トーンキャラクタの変化などを生みますが、トーンがどういう風に変わるか?はブリッジやボディ側の構造によるので、明確な傾向はありません。
(3)トーンに関してはもう一つ。
この種のブリッジ~テイルピースの構成では、ブリッジ~テイルピース間の弦の振動(ブリッジを超えてテイルピース側に漏れる弦振動)がトーンキャラクタに影響します。
一般的には、と言いますか近代的なトーンの傾向としては、この間の弦長はあまり長くしない方がよいとされています。(50~60年ぐらい前のいわゆる『ビザールギター』では、この部分の弦の振動が独特のトーンを生み出している原因の一つとなっています。)
・・・・っとここまでが基本的な現象の説明で、長くなりましたがここからが回答です。
※上記(1)の影響は結構大きく出るのが一般的です。
問題はその左手の手応え感の違いが許容出来るかどうか?或いはどちらをより快適と感じるか?で、これは実際に弾いてみて演奏者それぞれの感じ方でしか判断出来ません。
※上記(2)に関して。
ボディもビブラートユニットも同じモノだとすると、この程度のテイルピースの位置の違いではそれほど大きい影響は出ないでしょう。
全く差がない、とまでは言えませんが、木材やマイクのバラつきと区別がつかない程度と思われます。
※上記(3)に関して。
これも、現物を見ないとなんとも言えません。
トーンキャラクタが大きく違うかもしれませんし、それほど影響が無いかもしれません。
※>本人が使っていない仕様のギターが何故シグネイチャーなのかというと、恐らく最初の楽器の改造の都合でしょう。
元々本人はストックのジャズマスターを使っていて、その後フェンダー社のエンドーサーとなりシグネイチャーモデルの開発があり、その時にテイルピース位置を動かした、っという辺りが真相の様な気がします。(本人は最初のジャズマスターから既に、左手の手応え感かトーンの関係でビブラートユニットの位置変更の構想持っており、しかしその時は加工的にムリがあったので断念していたが、その後シグネイチャーモデルを作る事になったので構想を実現してみた、っという程度の話ではないか?と。こういう『プレイヤー本人の使用ギターのSPEC.とシグネイチャーモデルが微妙に違う』ということは、他のギターメーカでもよくある話です。)
お礼
大感謝です。 これほどまでに明確で分りやすく、納得至極の回答をいただけると気持ちがいいです。 納得しすぎて迷いも消えました。