>> 電源を入れっぱなしで、オーディオ・アンプの寿命が早く短くなったりはしないのでしょうか? //
理屈で言えば、短くなります。
電解コンデンサという部品が多用されていますが、この部品は、たとえば「85度C/2000時間」という規格だと、「85度Cの環境に置いた場合、2000時間で所期の性能を保証できなくなる」というものです。温度が10度C下がるごとに2倍になるので、25度Cなら128000時間(=5300日=14~15年)保つことになります。電源を入れっぱなしで、たとえば内部の温度が45度Cであれば、32000時間(=1300日=4年)くらいしか保たない、ということです。
温度が高くなる部分では105度Cとか、125度Cとかの高耐久品が使われている(はず)ので、実際にはもう少し長くなるでしょう。しかし、電源を入れっぱなしにすると、間違いなく寿命は縮みます。
もっとも、所期の性能が発揮できなくなったとしても、ふつうは余裕を持って設計されているので、実際には問題なく使用できるでしょう。その余裕さえも使い切ったときが、アンプの寿命ということになります。
ただ、この電解コンデンサというのは、放置すると別の理由で痛んでいきます。こちらは電気を通すことで回復する性質があるので、全く使わずに何年も放置するよりは、ときどき通電した方が、全体としては(あるいは総合的に見れば)性能を維持できるとも言えます。
>> 電源を入れてから数時間たってからの方が音質が良い //
1つは、上記のコンデンサの回復があるためです。
もう1つは、真空管や半導体は温度によって動作状態が変化するため、アイドリング状態で消費する(=熱に変わる)電力と、自然な空気の対流による冷却とが釣り合い、アンプの温度が安定するまでは、常にアンプの動作状態が変化し続ける、ということがあります。
ただ、この安定に要する時間は、キンキンに冷え込んでいるとかでもなければせいぜい数10分でしょう。また、A級アンプを除けば(従ってマニア向けの超高級品を除くほとんどのアンプは)出力の大小によって温度も変化するので、あまり固執する意味もありません。
まあ、マニア的な「音質を良くする(と信じるための)儀式」としては意味がありますが、電気が足りない折から、省エネという点であまり長時間の放置は如何なものかと思います。
頻繁に電源をON/OFFするのは良くありませんが、電源を入れっぱなしにしても寿命を縮めるだけなので、「常識的に」使えば良いでしょう。メーカーとしても、そういう「常識人」が使う前提で設計しているでしょうから。
お礼
電解コンデンサの耐久時間、耐久温度の話など大変勉強になります。 とても丁寧な解答をありがとう御座いました。 これからも、末永くオーディオと付き合っていこうと思います。