持っている遺伝子はほとんど変わりません。違いは優性遺伝子の現われ方です。ちなみに、皮膚の色も同じで優性遺伝子の現われ方だけのことです。
日本人については、例えば江戸時代は平均身長が低かったのです。しかし、身分が固定し、特に武士階級と他の階級との通婚が少なかったため、武士階級は身長が他の階級より高めでした。
しかし、全体の平均が低かったのは栄養状態が悪かったからです。鎖国状態と当時の食糧生産技術では、おおむね3千万人が限度で、常に飽和状態になって一人当たりの食糧が最低限ラインになっており、しばしば飢饉で大規模に飢餓が発生して人口激減することもありました。
こういう状態では、身長が低い方が体重が少なめでもOKで、結果として必要な食糧が少ない人が生き残りやすくなります。そういう状況下では、成長が阻害され、すぐに平均身長が低くなります。
遺伝子的には、突然変異での進化までは起こりませんでしたが、身長が低くなるよう優性遺伝子の特徴が現れる遺伝子の組み合わせの人の割合が増えます。それが次世代へ受け継がれるため、世代を経るとさらに低身長の遺伝子が優勢になり、低身長の人の割合がさらに増えます。
明治時代になって、平均身長はゆっくりと伸びていきました。栄養状態の改善に、すぐに比例しないのです。身長が高くなる優性遺伝子が発現した人も生き残りやすくなり、世代を経てだんだんと平均身長が高くなります。
しかし、第二次大戦から戦後しばらくまで、また非常に栄養状態が悪くなり、一時的だけでなく、遺伝子的にも低身長に戻りました。今の平均身長まで伸びてくるのも、ゆっくりでしたし、今後も栄養状態の悪化がなければ、さらに伸びそうです(過度なダイエットの悪影響がなければいいのですが……)。
こうした日本特有の事情以外には、日本近辺のアジアの特徴として、四季の変化、特に厳しい冬があります。食糧調達が難しく、かつ体温維持のための食糧が必要になると、身長が低い方が有利になります。
それだけではありません。通常は衣服で覆わない顔に顕著ですが、凹凸が少ないようになります。彫りが深くなく鼻が低いといった特徴が出てくるわけです。その方が体の表面積が減り、熱を逃がしにくく、体温維持に有利だからです。さらに目も細くなります。目は特に湿っていて(濡れているといったほうがいいかも)蒸発が激しく、蒸発は大きく熱を奪うので面積が小さいほうがいいのです。
日照量は緯度によってほぼ決まり、温帯ですから、そこそこあります。皮膚の色は、おおむね日射に適応した人が生き残りやすくなります。強すぎれば皮膚が損傷を受けやすく、弱すぎればビタミンD不足から骨に問題が生じやすくなります。ちょうど良い日射量を受けられると生き残る確率が高くなります。
これも優性遺伝子がどう出て来て、それが世代を重ねて特徴が強くでてきたかということになります。