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おとぎ話

僕の家の庭には、昔から離れがあった。 今はその離れには誰も住んでいないけど、僕のおじいさんのおじいさんの、そのまたおじいさんくらいの、ずっと昔の頃は僕の家の庭とお隣の家の庭を隔てる垣根もなくて、お隣の家の人たちも、その離れにやってきたりしていたことがあったみたいだ。 いつしか家の庭に垣根ができて、その離れは僕の家のものということになったみたいだけど、最近、お隣の家の人が頻繁に我が家の庭にやってきては、「その離れはもともとウチのものだったんだ」と言うようになった。 僕のお父さんは、「あそこは、もともと我が家のもので、お隣の家のものだったなんてことはない」と、取り合わない。 でも、お隣の家の人は毎日のように我が家の庭に入ってこようとして、離れが一体どっちのものか、をはっきりさせようとしているみたいだ。 それだけじゃなく、お隣の家の人は、ご近所の人たちにまで、「あそこの離れは、もともとウチのものだったんですよ。それを今はお隣の家のものということにされてしまっているので、私はただ、本来あるべき所有者に返してもらいたいと言ってるだけです」と言い回っている。 ご近所の人の一部は、「ちゃんと話し合って解決したらどうですか」という人もいるみたいだけど、僕のお父さんは「もともと我が家のものなのに、何を話し合うというんだね?」と一向に取り合わない。 たぶん話し合いになったら、お父さんも、お隣の家のおじさんも、お互いに自分の家のものだと言い張るだけで解決しないんじゃないかと思う。それで、どんどんエスカレートしていって、最悪の場合、我が家とお隣の関係が険悪になるだけじゃなく、我が家がこの街に住んでいることすら迷惑がかかることにもなっちゃうんじゃないか?なんて僕は心配している。 だって、お隣の家はとっても大きなお屋敷なんだけど、昔は貧乏で経済的に困っていたらしいのだけど、今はものすごく儲かっていて羽振りがよくなっているんだ。だから、最近じゃ、ご近所に対する影響力も大きくなっている。昔は僕のお父さんもご近所の中では、有名な名士だったらしいけど、今はちょっと景気が悪くて、ご近所も昔ほどお父さんのことを尊敬していないみたいだ。その代り、お隣のおじさんがご近所に対して発言力が増してきたってわけ。 ご近所さんも、お隣のおじさんのことを心から信用したり、尊敬したりしているようには見えないけれども、今はとにかくおじさんなくしては、この街の景気が成り立たなくなっちゃってるもんだから、みんな面と向かっておじさんに文句を言おうとする人がいないんだ。 でも、ここだけの話し、おじさんが貧乏だった時、我が家にやってきてお父さんにいろいろと教えを受けたり、お父さんから仕事を回してもらったりしていたことがあったんだ。そういうことを始めてから、おじさんの家が裕福になり始めたんだけどね。 その頃から、ちょっとしたいさかいやイザコザは、お父さんとおじさんの間にはあったけど、そのときはおじさんの方も自分の家の経済を立て直すことの方が優先で、当面の懸案はとりあえず棚上げしておきましょう、ということだったらしい。 それが、おじさんの家が復興して、むしろ僕の家よりも豊かになってきたものだから、おじさんもいろいろと言い出すようになったんじゃないかな? 少なくとも僕にはそう見えるけど。 さっき、話し合いをしても全く解決しないんじゃないかということを言ったけど、ご近所の人の中には、「離れ全部じゃなくて半分ずつにするとか、離れはお宅のものでいいから、土地はお隣のものにしてあげるとか、お互いに譲り合うことだってできるんじゃないの?」という人もいる。 でも、お父さんは「そんなことをしたら、そもそも離れがお隣の家のものだったのかもしれないということを、お父さんが認めていたことになっちゃうだろ?」うーん。言われてみると、そんな気がしないでもないけど…。 「それに、お父さんも昔は知らなかったんだけど、あの離れのある土地の周りは、とっても貴重な宝が埋まっているかもしれないという話しが、最近になってわかってきたんだ」、「だから、あの離れそのものだけじゃなくて、その周りの土地、正確に言うと地面の下も、お隣の家から見れば『自分のもの』と言いたいんだよ。いや、本心はあの離れが欲しいんじゃなくて、離れを所有することで、その周囲の土地が自分のものになる、そのことの方が、お隣の家にとっては価値があると考えているんじゃないかな」 「お父さんも、お宝の話が出た当初は、お隣の家と共同で発掘しようという相談をしていた時期もあったんだ。でも、いつしかお宝が思いのほかたくさんあるかもしれないということが話題になってきてから、お隣の様子がおかしくなっちゃったんだよね」 「お隣にしてみれば、そうやって離れがもともとは自分のものだったということが、ご近所全体の問題になってくれれば、その半分だけでも譲歩してやる、という態度を示すことで、自分は我慢して相手の言い分も認めてあげたという名誉も勝ち取れる上に、お宝の半分以上が自分のものになるんだとしたら、こんなボロ儲けはないだろう?」 そうか、それでこの間、お隣の家のお兄ちゃんが酔っ払って我が家の庭に入って、離れに近づこうとした時に、ウチのお兄ちゃんとイザコザになったことをきっかけに、お父さんが離れを法務局に登記したことがあって、それをお隣のおじさんがものすごく怒ったことがあったっけ。 その後、おじさんの怒りはまだ収まっていないらしく、去年もおじさんの家の中にあった、お父さんが出張の帰りにおじさんのために買ってきたお土産の置物なんかを壊していたという話を聞いたこともあるし、お母さんが作った夕食のおかずのおすそ分けなんかも、昔は喜んで受け取ってくれたのに、今では受け取ってくれようとしないんだ。まぁ、我が家でも、一昨年に台所が壊れる事故があって、おじさんが言うには「そんな危ない台所で作ったおかずなんか、何が混ざってしまっているか知れたもんじゃない」って言ってるんだけど。 たしかに、事故の直後はそうだったかもしれないけど、いまは台所もそれなりにきれいになってるんだけどなぁ。 それからも、お隣の人たちが我が家の庭に入ろうとする動きは止むことがなかったのだけど、つい最近、大変なことが起きた。 それは、隣のお兄ちゃんが、ウチのお兄ちゃんに対してナイフをちらつかせたんだ。 いままでは、そんな凶器が絡むような出来事はなかったのだけれど、今回は「いつでもお前らのことを刺そうと思えば刺せるんだぞ」ということを見せ付けられたような気がして、とっても不安になった。 お父さんは、すぐに隣のおじさんに「お宅のお子さんが、私の息子に向かってナイフをちらつかせましたよ。そんな行為は何の得にもならないからすぐに止めて下さい」と抗議したんだけど、今のところおじさんは「本当かどうか、キチンと調べてからご返事します」と言ったまま、まだ何も返事がない。 これまでの件については、いろいろと心配してくれている人もいて、とくに向こう横丁のご隠居さんはお父さんのことをよく面倒見てくれていることもあって、隣のおじさんにも何回か注意をしてくれたこともあるんだ。 「もし、お宅がお隣の離れの問題で、理不尽なトラブルを起こすようなら、あたしも黙っちゃいないよ」と何回か、お隣のおじさんに警告してくれたんだけど、今のところおじさんの方は、聞く耳を持っていないように見える。 まぁ、ご隠居さん自身も、隣のおじさんの機嫌を本当に損ねてしまったら、この街の景気にすごく影響力を持っているおじさんのことだから、街がどうなるかわからないという心配を持っていて、あまり強気に出られないということもあるんだろうけど。 これから僕の家、どうなっちゃうんだろう。

みんなの回答

  • 27club
  • ベストアンサー率15% (72/456)
回答No.2

長文、ご苦労様です。  文意から見ると、家屋の保存登記が出来たみたいだから、土地も、建物も、全部貴方のものです。  しかし、この話、どこかで聞いたような。  今、日本も尖閣を盗られそうになっています。国民は騒いでいますが、国内でも、こんな事は、日常茶飯事です。  私、借家住まいですが、その大屋、庭に、たくさんのイチョウやケヤキの苗木植えて居るんです。他にも、石も集めて居るんです。これを何にするかと言えば、他人の山に植えてるんです。何十年か立つと、大きく育ちます。その時に、境界はこの木が目印と言って、盗ってしまうのです。石は、傾坂の下に積んで、その下の土地もかすめ盗るためです。  境界が出来てしまった以上、後は、人間関係の強弱で決まってしまうのです。言うならば、強い者勝ちです。これを訴えても、周りのものは、強い者の味方をします。だから、証人もなく、客観的証拠もなく、泣き寝入り、盗ったもん勝ちです。おそらくは、徹底的に争えば、周りは、そこまでしなくてもと、逆に憎まれてしまいます。  日本人は、中国、どうのこうのと言ってますが、国内も、中国と、全く同じ様なものです。こんな事だけでなく、公務員の質とか、色々と問題がありますが、このような国内問題は放置して、国際的になると、文句を言う日本人は、我ながら、どうかと思いますね。  と言うことで、汚い人間は、大嫌いです。徹底的に戦って、守って欲しいですね。それが出来なければ、さっさと、お隣に、差し上げて下さい。

  • cse_ri2
  • ベストアンサー率25% (830/3286)
回答No.1

ぶっちゃけ、個人の問題なら引っ越せ。 自分に能力と運があれば、実家に執着しなくても十分生きていける。 他で生きていけないようなら、実家にすがっても周囲に潰されるだけ。 それだけの価値しか、自分にはなかったってことだ。 これが、昨今の日本と中国の関係の比喩なら、答えは一つ。 戦って、白黒つけるしか道はないと覚悟を決めること。 ただし、最初の一発だけは相手に撃たせる。 以上。

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